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◇◆◇◆有閑倶楽部を妄想で語ろう22◇◆◇◆

1 ::04/07/26 21:52
ここは一条ゆかり先生の「有閑倶楽部」が好きな人のためのスレッドです。
 前スレ http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/

お約束
 ■sage推奨 〜メール欄に半角文字で「sage」と入力〜
 ■妄想意欲に水を差すような発言は控えましょう
*作品への感想は大歓迎です。作家さんたちの原動力になり、スレも華やぎます。

関連サイト、お約束詳細などは>>2-10の辺りにありますので、ご覧ください。
特に初心者さんは熟読のこと!

2 ::04/07/26 21:53
◆関連スレ・関連サイト

「まゆこ」 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 意見交換や議論をする時に使うスレ。テンプレ相談などはこちらで。

「有閑倶楽部 妄想同好会」 http://houka5.com/yuukan/
 ここで出た話が、ネタ別にまとまっているところ。過去スレのログもあり。
 *本スレで「嵐さんのところ」などと言う時はココを指す(管理人が嵐さん)

「妄想同好会BBS」 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 上記サイトの専用BBS。本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレあり。
 *本スレで「したらば」と言う時はココを指す

「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 上記BBS内のスレッド。ゲストブック代わりにドゾー。
     
「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 上記サイトの専用絵板。イラストなどがUP可能。


3 ::04/07/26 21:53
◆関連スレ・関連サイト

「まゆこ」 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/21-n
 意見交換や議論をする時に使うスレ。テンプレ相談などはこちらで。

「有閑倶楽部 妄想同好会」 http://houka5.com/yuukan/
 ここで出た話が、ネタ別にまとまっているところ。過去スレのログもあり。
 *本スレで「嵐さんのところ」などと言う時はココを指す(管理人が嵐さん)

「妄想同好会BBS」 http://jbbs.shitaraba.com/movie/1322/
 上記サイトの専用BBS。本スレに作品をUPしにくい時のUP用のスレあり。
 *本スレで「したらば」と言う時はココを指す

「有閑倶楽部アンケート スレッド」
 http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=1322&KEY=1077556851
 上記BBS内のスレッド。ゲストブック代わりにドゾー。
     
「■ □ ■ 妄想同好会 絵板 ■ □ ■」
 http://www8.oekakibbs.com/bbs/loveyuukan/oekakibbs.cgi
 上記サイトの専用絵板。イラストなどがUP可能。


4 ::04/07/26 21:54
◆作品UPについてのお約束詳細(よく読んだ上で参加のこと!)

<原作者及び出版元とは全く関係ありません>

・初めから判っている場合は、初回UP時に長編/短編の区分を書いてください。

・名前欄には「題名」「通しNo.」「カップリング(ネタばれになる場合を除く)」を。

・性的内容を含むものは「18禁」又は「R」と明記してください。

・連載物は、2回目以降、最初のレスに「>○○(全て半角文字)」という形で
 前作へのリンクを貼ってください。

・リレー小説で次の人に連載をバトンタッチしたい場合は、その旨明記を。

・作品UPする時は、直前に更新ボタンを押して、他の作品がUP中でないか
 確かめましょう。重なってしまった場合は、先の書き込みを優先で。

・作品の大量UPは大歓迎です!

5 ::04/07/26 21:55
◆その他のお約束詳細

・萌えないカップリング話やキャラ話であっても、 妄想意欲に水を差す発言は
 控えましょう。議論もNG(必要な議論なら、早めに「まゆこスレ」へ誘導)。

・作家さんが他の作品の感想を書く時は、名無しの人たちも参加しやすいように、
 なるべく名無し(作家であることが分からないような書き方)でお願いします。

・あとは常識的マナーの範囲で、萌え話・小ネタ発表・雑談など自由です。

・950を踏んだ人は新スレを立ててください。
 ただし、その前に容量が500KBを越えると投稿できなくなるため、
 この場合は450KBを越えたあたりから準備をし、485KB位で新スレを。
 他スレの迷惑にならないよう、新スレの1は10行以内でお願いします。

6 ::04/07/26 21:55
◆初心者さんへ

○2ちゃんねるには独特のルール・用語があるので、予習してください。
 「2ちゃんねる用語解説」http://www.skipup.com/~niwatori/yougo/

○もっと詳しく知りたい時
 「2典Plus」http://www.media-k.co.jp/jiten/
 「2ちゃんねるガイド」http://www.2ch.net/guide/faq.html

○荒らし・煽りについて
・「レスせずスルー」が鉄則です。指差し確認(*)も無しでお願いします。
 *「△△はアオラーだからスルーしましょう」などの確認レスをつけること

・荒らし・アオラーは常に誰かの反応を待っています。
 反撃は最も喜びますので、やらないようにしてください。
 また、放置されると、煽りや自作自演でレスを誘い出す可能性があります。
 これらに乗せられてレスしたら、「その時点であなたの負け」です。

・どうしてもスルーできそうにない時は、このスレでコソーリ呟きましょう。
 「■才殳げまιょぅ■タロ無し草@灘民【3】」(通称:ちゃぶ台スレ)
 http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1032266474/l50
 (注)有閑スレのことだとバレないように呟いてください。このスレで他人の
    レスに絡んだり、このスレのログを他スレに転載することは厳禁です。

○誘い受けについて
・有閑スレでは、同情をひくことを期待しているように見えるレスのことを
 誘い受けレスとして嫌う傾向にありますので、ご注意を。
 語源など http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1028904997/172


7 ::04/07/26 21:57
◆「SSスレッドのガイドライン」の有閑スレバージョン

<作家さんと読者の良い関係を築く為の、読者サイドの鉄則>
・作家さんが現れたら、まずはとりあえず誉める。どこが良かったとかの
 感想も付け加えてみよう。
・上手くいけば作家さんは次回も気分良くウプ、住人も作品が読めて双方ハッピー。
・それを見て自分も、と思う新米作家さんが現れたら、スレ繁栄の良循環。
・投稿がしばらく途絶えた時は、妄想雑談などをして気長に保守。
・住民同士の争いは作家さんの意欲を減退させるので、マターリを大切に。

<これから作家(職人)になろうと思う人達へ>
・まずは過去ログをチェック、現行スレを一通り読んでおくのは基本中の基本。
・最低限、スレ冒頭の「作品UPについてのお約束詳細」は押さえておこう。
・下手に慣れ合いを求めず、ある程度のネタを用意してからウプしてみよう。
・感想レスが無いと継続意欲が沸かないかもしれないが、宣伝や構って臭を
 嫌う人も多いのであくまでも控え目に。
・作家なら作品で勝負。言い訳や言い逃れを書く暇があれば、自分の腕を磨こう。
・扇りはあまり気にしない。ただし自分の振る舞いに無頓着になるのは厳禁。
 レスする時は一語一句まで気を配ろう。
・あくまでも謙虚に。叩かれ難いし、叩かれた時の擁護も多くなる。
・煽られても、興奮してレスしたり自演したりwする前に、お茶でも飲んで頭を
 冷やしてスレを読み返してみよう。
 扇りだと思っていたのが、実は粗く書かれた感想だったりするかもしれない。
・そして自分の過ちだと思ったら、素直に謝ろう。それで何を損する事がある?
 目指すのは神職人・神スレであって、議論厨・糞スレでは無いのだろう?


8 :名無し草:04/07/26 21:59
新スレ立てました。
テンプレなのに二重投稿になって本当にすみません(汗)

こちらをSS投稿と感想、
旧スレを雑談に使って消費したらどうでしょうか。

9 :名無し草:04/07/26 22:01
乙カレー

10 :名無し草:04/07/26 22:05
>1
どんまい!
ありがとう。

11 :名無し草:04/07/26 22:06
スレ立てありがd。

12 :名無し草:04/07/26 22:17
>1
乙です!

13 :名無し草:04/07/26 22:56
>>1
お疲れ様でしたー。

14 :秋の手触り[121]:04/07/26 23:06
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/644の続き

 パーティーは酣を過ぎ、終盤に向かおうとしていた。
 ゲームのために浮ついていた人々の熱も少しずつ醒めていき、それぞれ穏やか
な歓談のひとときを過ごしている。
 魅録は、壇上の裾の方へ早足で向かった。そこには清四郎が一足早く佇んで
いたが、他のメンバーはまだ集まっていない。
 魅録は少し強張っている頬を自覚しながらも、なんとか自然に見えるように気を
つけながら清四郎に声をかけた。
「悠理たちはまだか?」
「そのようですね。そろそろ閉会の時間も近づいてますが」
 清四郎の眼差しの先、悠理と豊作が恰幅のいい紳士と談笑している。
 今井昇一との一件のあと、悠理は清四郎と別れ、豊作に伴われて色々な人間に
挨拶をしてまわっている。海千山千を相手に腹芸が苦手な豊作は大変そうだが、
悠理の無邪気さがうまく緩衝材となっているようだ。
 ふたりしてしばらく、悠理と豊作の様子を見ていたが、ふと清四郎は不審そう
に呟いた。
 「ちょっと悠理の様子がおかしいと思いませんか」
 どことなく元気がないように見えるんですよね。
 遠目に悠理たちの方を見ながらそんなことを言う清四郎に、魅録は内心で
憤りを抑えることが出来なかった。
 むろん、気づかぬことは清四郎の罪ではない。
 清四郎は清四郎で、精一杯の恋をし、失恋したばかりなのである。他の人間
のことなど目に入らなくてもおかしくないのだ。
 それでも。
「そうか? 俺にはいつもと同じように見えるけど」
 それでも俺ぐらいはお前を恨めしく思ってもいいはずだ。当の悠理自身がお前
を責めないのだから。

15 :秋の手触り[122]:04/07/26 23:07
 しばらくして、豊作と悠理も魅録たちの方へやってきた。
「あー疲れたー」
「お疲れさん」
 今回の役目は、悠理には荷が重かっただろう。それでも、今回の作戦の中核を
成す「今井昇一との婚約疑惑」をパーティーの参加者たちに深めさせるためには、
悠理自身が表舞台に立つ必要があった。
 今井グループに対しては剣菱との同盟をちらつかせて足止めを、新会長の座を
狙う社内の者には、悠理の新しい夫もまた敵になりうることを見せ付けて牽制を。
 二重のペテンに、人々が騙されてくれるかどうか――はて。
「実際、悠理はよくやってくれたよ」
 会話に入ってきたのは豊作である。彼自身も少し疲れた様子で豊作はネクタイ
を緩めている。
「豊作さん。今日はどうでしたか」
 彼は微笑んだ。
「僕の方こそ君に今すぐ聞きたいぐらいだよ。まあ、それは後にしておいた方が良さ
そうだけどね」
 今回の影の殊勲章は豊作でもある。
 このパーティー自身は剣菱夫妻の多大な協力があってはじめて実現したもので
あるが、あくまで彼らの「協力」は「協力」に過ぎない。
 そのため、一切合財の調整は豊作がしたのだ。もちろん手伝えるものなら魅録も
手伝ったのだが、所詮部外者にすぎない人間が行うには無理がある。大掛かりな
セッティング全てを豊作と秘書の金井が徹夜で行ったのだ。疲れもする。
 悠理の方といえば、目の前にご馳走がありながら、満足に口にできなかった
鬱憤を晴らすように、てんこ盛りになった皿をがつがつと平らげていた。清四郎は
そんな彼女に呆れた眼差しを遣って、「もうちょっと食べ方を控えるか、人に見え
ないところでやってください」と注意する。

16 :秋の手触り[123]:04/07/26 23:09
 確かに黒いドレスの美女(に化けた悠理)が、大食いチャンピオンも真っ青な
勢いで食事を平らげていれば、誰でも何事かと思うだろう。
「お前はいーだろっ。あのあと一人でご飯食べられたんだからっ。それに比べて、
あたいは変な男から開放されたかと主たら、今度は兄ちゃんに連れまわされて、
ずっとオヤジたちに愛想笑いしてたんだぞっ」
 確かに清四郎は、あの今井昇一から悠理を救ったのち、ひとりでのんびり食事
を食べることが出来たのだが。
「悠理は、ここに来る前にたんまり食べてきたんでしょう」
「あんなの、今井の馬鹿息子を殴りつけたときに全部消費しちゃったよ」
「燃費の悪い身体ですねぇ。どうです、一回うちの病院で検査受けてみれば?」
「絶対やだかんな。お前の言う通りにしたら、何されるか」
「いやあ、一度悠理のブラックホールの胃を調べたいと思ってたんですよね」
 いつまでも続く彼女たちの遣り取りに、豊作が微笑ましくてならないという表情
を浮かべ、言った。
「相変わらず元気だな悠理は――」
 いつもは家族の破天荒さに振り回されている彼でも、やはり家族は愛しいもの
なのだ。
「どうしたんだい、魅録君。何か問題でも」
 無意識に硬い表情をしていたらしい。豊作が心配げな眼差しを遣してきた。
「いや、なんでもありません」
 深く考えるな。
 深く考えると――嫌な方向に思いが至ってしまう。
 魅録はまだじゃれ続ける清四郎と悠理を見た。一片の曇りもなく、笑ってしまえる
悠理を――見た。
 

17 :秋の手触り[124]:04/07/26 23:10
 ちょうど良い頃合いとなり、豊作と万作がそれぞれ挨拶をして、パーティーは閉幕
となった
 それぞれ出席した役員たちとは言葉を交わしているが、それとは関係なく、最後の
挨拶をしに豊作と万作の周りには男たちが群れをなしたので、魅録たちは少し
離れたところをからそれを見る。
「あ、やっぱり――」
 ふとその様子を見ながら、魅録は呟いていた。
 現在、豊作は剣菱精機の常務・高砂と話をしている。その表情が、いつもの豊作
と比べて若干堅い。
 一昨日、剣菱精機の専務室ではじめて高砂と会話する豊作を見たときも同じよう
な感想を抱いた。そのときは部下である高砂の方が随分年上であり、その分会長
の息子というだけで専務になりおおせた自覚のある豊作が謙虚に振舞っているの
だと思っていた。だが、その後、別の役員たちと会話しているときの豊作を見ている
と、ここまで堅くはなかっているようには見受けられない。
 相手が役員だから、ではなく、相手が高砂だからこその、この態度なのだ。
 では、それは何故だろう。
(常務の高砂さんは、専務派のはずだ――)
 秘書の金井からも、豊作自身からもそう聞いている。また豊作と高砂が会話して
いるところを見ても、若輩者の豊作に対して侮った態度をとらず、常に立てて接し
ていることが分かる。
 心強い味方に見える――ただし外側からは。
(本当は違うのか?)
 それとも、会社では利害は一致しているけれど、性格的に合わないのだろいうか。
 魅録はいろいろ思いを馳せたが、こればっかりは豊作自身に問わなければ分か
らない。
 無駄に頭を使うことをやめて、魅録は思考を切り替えた。

18 :秋の手触り[125]:04/07/26 23:11
 あいかわらず豊作との挨拶を待つ人の数は多い。終わるのをここでじっと待って
も仕方ないので、魅録たちは豊作をとりあえず会場に残し、予めとっておいたホテル
の一室に場所を移した。
 まだ合流できていない他のメンバーにそのことをメールで告げると、悠理はパウダー
ルームで不快な化粧を落とし、持ってきておいた身軽な服に着替える。
 魅録も同じように着替えると、盛大な伸びをして寝台に転がった。
 昨晩は徹夜だったのだ。そして今夜もそうなる予定なのだ。今のうちに休憩を
しておかなければ。
 清四郎は着替えを持ってきてなかったので、上着をハンガーにかけて長椅子で
足を伸ばす程度であったものの、それでも随分リラックスした様子である。
 先に清四郎の方から今日の戦果を聞いておこうかと思いはじめたところ、ちょうど
玄関のノッカーが叩かれた。
「ちょっと待ってくれ」
 覗き窓を覗くと可憐の姿。
「ただいま――あ〜楽しかったぁ。いい男にも声かけられたし」
 可憐はどうやらパーティーを思う存分楽しんできたらしい。満面の笑みを浮かべて、
うきうきと部屋に入ってきた。
 続いて帰ってきたのは美童。、次に豊作、最後に野梨子。
 ――と、八代儀一。

 
 !?


「やあ、また会ったね」
 にこにこ笑いながら、迷惑げな野梨子の後ろに立つ八代に、魅録と悠理は思わず
手にしていたグラスを落とした。

                       ツヅク

19 :名無し草:04/07/26 23:17
>秋の手触り
新スレを覗いてみたら、さっそくのuP、嬉しいです。
個人的には悠理スキーなので、切ないながらも、
ドキドキ楽しませていただいてます。
野梨子と八代は?と思っていたら、さっそく登場!
八代……う〜ん、気になります。次はどうなるんだろう…。


20 :名無し草:04/07/26 23:35
>秋の手触り
事件の核心に迫ると共に、悠理の心にも迫っちゃった魅録が何とも・・・・
作者さん、お上手ですね。

豊作さんも素敵なので、読んでてとても楽しいです。
次回は八代氏ご活躍?清四郎の反応もどうなるんだろう?
もしかして魅録の見せ場が減るのか?
等々予想を立てるのも楽しみです。

21 :名無し草:04/07/26 23:43
>秋の手触り
会話分を挟んだ心理描写の巧みさ、私も毎回感嘆しながらお話読んでます。
八代の登場によってまた各々の心に波紋が広がりそうですね。
個人的にはやっぱり、清四郎のいっぱいいっぱいに拍車がかかりそうだなーと。
次の展開が待ち遠しいような、何が起こるのか恐いような、そんな気持ちで続き待ってます。

22 :豊作×和子(和子×豊作?)1:04/07/27 21:54
前スレ753さんの
>菊正宗一家の日常が読みたいです。
にイマジネーションを刺激されてコネタなど。
ちなみに、元のリクとは全く別物になってしまいましたが。
短編です


菊正宗和子の朝はうんと濃いブラックではじまる。
朝の静寂を雑多に乱すニュースキャスターの声をBGMに、経済新聞を広げて眠気が醒めるのを待つ。
そしてつらつらと、近頃思わしくない病態の担当患者のことを考えた。
深夜にドクターコールがなかったということは、夜は何もなかったということだろう。

台所から包丁で何かを切る音がする。
この家で一番早起きの母が朝食を作っているのだ。
「あの父」の嫁をやることが出来ているのだから、母は大した人だとは思うが、
自分にはとても真似できそうにない。
本当は病院の近くのマンションを借りて一人暮らしをしたいところだが、
家事全般をこなす自身のない自分には遠い夢だ。
「はい、どうぞ」
目の前に出された味噌汁とごはんに、和子はにっこりと笑った。
「母さん、父さんなんかやめて、私の嫁にこない?」
「何馬鹿なこと言ってるの」
母は優しく笑った。
「わたし、尽くしてくれる人じゃなくちゃ、とても結婚なんてできないわ。
それに、結婚しても第一線でバリバリやれなくちゃ」

23 :豊作×和子(和子×豊作?)2:04/07/27 21:55
剣菱豊作の朝は、甘ったるいミルクティーではじまる。
「……僕はコーヒーがいいんだけど」
「奥様にお目覚めの飲み物はミルクティーにするようにと言いつけられましたので」
メイドの言葉に脱力した豊作は、目を閉じてその飲み物を一気飲みする。
ロココ調の白いレースに縁取られたベッドカバー、重厚にして優美な天蓋つきの寝台。
目覚めるたびに憂鬱になるベッドルームから目を逸らし、
ついでに母親の準備してくれた仮装のようなスーツからも目を逸らし、
逃げるようにダイニングルームへ足を運んだ。

朝っぱらから豪華に飾り付けられた朝食の席につくのは自分だけで、
両親はおかしな「自分の趣味」に朝から耽り、妹は夢の中。
貴重な貴重な豊作の安寧の時間である。
剣菱の会長夫妻には相応しくない彼らの「趣味」も、近頃はこの時間を持てるのなら
反対すまいと誓う豊作である。
だが、「朝の掃除」を終えて、メイドの格好から有閑マダムの衣装に着替えた母親が
にっこり笑って彼の前に姿を現した。
「おはよう豊作。今日はあなたにいい話があるのよ」
「……おはようございます」
いい話とはなんだ、と戦々恐々した豊作に、彼女はにっこり笑って宣言した。
「お見合いなさい」
「またですか」
呆れ声でそう言った途端、母親の笑顔になんともいえぬ凄みが加わった。
「ええそうよ。子の幸せを思う母親の提案に文句はないわね?」
「今度はどんな人ですか。レースの似合う外国の美少女ですか、それとも」
「その件はあきらめました。なんといっても剣菱を支えられる強い嫁でないとね」
つまり、母がふたりも増えるのか。
諦めの溜息をついた豊作に、母は煌びやかに微笑んで言った。
「清四郎君のお姉さんの和子さんよ」
「は?」


24 :豊作×和子(和子×豊作?)3:04/07/27 21:57
で。

「もう結婚式ですか……」

もう豊作自身の抗いなど意味をなさず、気がつけば一ヶ月の時間が流れて
もう結婚式である。
通常のカップルでも結婚の準備には時間がかかるというもの、剣菱という大企業を
継ぐ豊作の婚姻となれば通常なら一年はかかるというのが普通なのに、
このスピードは尋常ではない。
いやいや問題はそこではなく。
今回の結婚で豊作の意見は一度も聞かれることはなかった。
なんといっても、相手の女性が母親とタッグを組んで、あれよあれよという間に
すべてを推し進めてしまったのだ。
「ううう」
政略結婚させられる深窓の令嬢のように、涙を飲む豊作であった。

「なーに泣いてるの」
ふと振り向くと、すでにウエディングドレスを着用した新婦の姿が。
確かに確かに美しくはあるのだが。
「……まだ新婦は新郎に姿を見せてはいけない時間じゃないのですか」
「馬鹿馬鹿しい」
シンプルのドレスを意外なほどすっきりと着こなした和子が、腕を組んで笑った。
柄が悪い。
「こんないい女に貰われるんだもの。感謝して頂戴」
「感謝してって」
「それに、私たち、いい共犯者になれると思うのよね」
和子はそう言うと、呆然としてる豊作の唇を奪った。

「これでも、ちょっとあなたのことは好きなのよ」
ふふふと笑う彼女は十分に幸せそうで、豊作はこれ以上なんとも言うことは出来なかった。

お粗末さまでした。

25 :名無し草:04/07/27 22:35
>豊作×和子
>「これでも、ちょっとあなたのことは好きなのよ」
和子さんらしい。どこがどんな風にちょっと好きなのか小一時間語ってくださいw

26 :名無し草:04/07/27 22:44
恐怖の母親になれているので、女性に寛容なところ?
お坊ちゃん育ちで優しいだろうし<ちょっと好きなところ

27 :名無し草:04/07/27 23:42
>豊作×和子
このカプ大好き、です。
豊作無視で和子と話を進める百合子さん、最強!!
悠理と清四郎の呆然とする様を思い浮かべ、萌え。
でも、とりあえず豊作は毎朝ブラックコーヒーを飲めるように
なりそうだし、それなりに幸せってことで。



28 :名無し草:04/07/27 23:49
子供はやっぱり和子さんに似るんだろうな。
あるいは剣菱夫妻から隔世遺伝するか(笑)
すんごい濃い一家だ。

29 :名無し草:04/07/27 23:49
私も何気にこのカプ好きです。
豊作さん、原作のフクタマ誘拐事件の時はアレだたけど、
奇人変人の中の唯一の凡人ぶりがいい。
どんな結婚生活送るのか続きも読んでみたいなぁ。とさりげにリク。

30 :名無し草:04/07/28 00:19
『鬼闇』うPします。
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/638の続きです。
オカルト方向へ進んでいきたいと思っていますので、苦手な方はスルーして下さい。



31 :鬼闇(10):04/07/28 00:20
義正に案内され、皆は居間へと入り、進められるがまま座布団に座った。
「いっただきまーす!」
座ると同時に、早速置かれた菓子へと手を伸ばしたのは悠理だ。
「おばちゃん、このお菓子、うまーい!」
「喜んでもらえて嬉しいわ。」
志津子は、皆に冷たい麦茶を配りながら微笑んだ。

「こんな大きな屋敷に、お二人でお住まいってことはないですよね?」
清四郎は居間から見える長い渡り廊下や広い庭、離れ等を眺めながら聞いてみた。
「ええ、奥の部屋に私の母の菊江がおります。なにぶん高齢なもので、後でご挨拶させます
から。」
「そんな、気を遣わないで下さい。」
「そうよ、おじさま。」
魅録も可憐も慌てて口を挟んだ。
「いやいや、貴方達のような若い方のエネルギーを、うちの母にも分けて欲しいのですわ。食事の
頃には来ますので、その時に紹介させて頂きますね。」
「ええ、喜んで。」
義正の決して押し付けがましくない言葉に、野梨子は笑みを返した。
「あとは母の面倒を見てもらっている道子の四人で暮らしています。通いのお手伝いさんとか庭師
さんもいますが。」
義正の話に、美童は一番気になっていたことを聞いてみた。
「お嬢さんは一緒に住んでないんですか?」
「娘の美津子は東京の大学院で勉強していますし、息子も同じ東京で所帯を持っています。孫も
いますが側にいれば甘やかしてしまいますけど、離れていれば可愛い孫の良い面だけを見ていら
れる。それが丁度良い距離ですわ。」
義正はハッハッハと笑って答えたのだが、美童はというと、がっくりと肩を落としていた。

32 :鬼闇(11):04/07/28 00:21
「では、このお家はどなたが継がれるんですの?」
千年という伝統を笑い飛ばした義正ならばなんと答えるのだろうか?
野梨子自身も胸の片隅に抱えている家のことを思い、思わず口にしていた。
そんな思いに気が付いたのか、義正は穏やかな表情で語り始めた。
「息子達がここに住みたいといえば住めばいいし、東京の方が良かったらそれでもいいと思ってい
ます。彼らには彼らの人生がありますから。」

白鹿家以上に長い歴史のある家である。
その家を絶やしても構わないと言い切った正義に、野梨子は驚きを隠せなかった。
「人間、誰でもいつかは死ぬ。歴史なんてものは後から生まれたものがどう考えるかであって、
大切なのは、その人がいかに満足のいく道を辿ったかということですよ。それが人生というもの
ですからねぇ。家なんてものに縛られることはないんですよ。」
その言葉は野梨子の胸に静かに染み込んだ。
「佐渡に来ることを楽しみにしている、父の気持ちが解るような気がしますわ。」
野梨子はにっこりと微笑んだ。

「先ほど近所の方々が、大きな荷物を抱えて奥へと入って行くのが見えたんですが、何かあるん
ですか?」
先ほど悠理と目にした光景を思い出し、魅録は義正に聞いてみた。
「ああ、我が家には能舞台がありましてな、今夜、舞台があるんですわ。人が集まりますので、ちょ
ーっと賑やかになってしまいますが、お許しください。」
義正の答えは清四郎と野梨子にとって、とても魅力的なものだった。
「夜ということは薪能ですか?」
「私も拝見させて頂いて構いません?」
「あたしも見てみたい!能って見たことないし、なかなか見る機会もないもの。今日が良いチャンス
なんだわ、きっと。」
「僕も見たこと無いなぁ。ガールフレンドのママ達はとても幻想的で素敵だって言ってたから、一度
は見てみたいかも。」
以外にも可憐と美童までもが賛同した。

33 :鬼闇(12):04/07/28 00:23
「ああ、そんなことでしたら一向に構いませんよ。近所からもたくさん集まって来られますし。」
義正は、若い四人が日本の伝統芸能に興味をもっていることを、素直に喜んでいるようだ。
そんな中、黙々と菓子を口に放り込んでいた悠理が顔を上げた。
「あたい、寝ちまうかも。」
「俺もちょっと自信ないな。」
悠理と魅録の言葉に他の面々は苦笑いを浮かべていたが、義正は変わらずニコニコと微笑んで
いた。
「良く眠れる事請け合いですわ。」

「それにしても凄いよなぁ、家に舞台があるなんてさ。それだけ能が盛んってことだよなぁ。」
悠理同様、能には興味はないものの、魅録はこの家のスケールの大きさに驚いていた。
「室町時代に世阿弥が佐渡に流されたことも原因の一つですが、江戸時代、初代佐渡奉行の大久
保長安が能楽師出身だったことが大きな影響を与えたようですね。」
「同じ新潟県でも佐渡島と新潟市では文化も違うと言いますもの。中でも能は古くから庶民の生活
にも浸透していたそうで、島の中だけでも三十三箇所もの能舞台があるそうですし、幻想的な薪能
も数多く見ることが出来ますのよ。」
清四郎も野梨子も佐渡の歴史を事前に勉強してきたので、語り始めたら止まらない。
「お二人共良く御存知ですなぁ。私なんかよりよっぽど詳しい!」
「いやですわ、おじさま。大学でお教えしている方が何をおっしゃいますの。」
野梨子は訳知り顔で話していた自分を恥じていた。

「へぇー、そんなに盛んなら、能を見たい時には佐渡に来ればいいんだね。」
美童が感心したように呟いた。
「能もそうですが、人形芝居も盛んなんですよね?」
清四郎が義正に向けた質問に、悠理が再び手を止めた。
「人形芝居って、ひょっこりひょうたん島みたいなヤツ?」
「おまえなぁー。」
「あたしだって、そうじゃないことぐらい解るわよ!」
悠理の言葉に魅録と可憐が呆れたように口を開いた。

34 :鬼闇(13):04/07/28 00:25
馬鹿にされて面白くない悠理は、ふくれっ面で又菓子を掴んだ。
そんな悠理に義正は微笑みながら、優しく教えてあげた。
「そうそう、ドン・ガバチョの替わりに日本人形の大きいのを動かしておるのさ。」
義正の言葉に悠理はなるほど!と手を打ち、冷ややかな眼差しで自分を見ている清四郎に向かっ
て声を上げた。
「おっちゃんみたいに教えてくれれば、あたいだって解るのに!」
「それは、義道さんは教えるのが専門だからです。僕に同じものを求めることが間違いというもの
ですよ。」
清四郎は義正の教育者としての丁寧さや根気良さに尊敬の念を抱いたものの、自身の懐の狭さ
を感じたのか、少し顔を赤らめながら答えた。

「佐渡の伝統芸能で、説経人形・文弥人形・のろま人形は国の重要無形民族文化財に指定されて
いるんだよ。つまりは正月や盆の行事みたいに大事に残していきなさい、ということだね。」
義正は悠理にも解り易いように丁寧に話した。
「その説経とか、文弥人形とかって何なんだ?のろま位ならあたいでも知ってるぞ。とろいってこと
だろ?」
皆は空を見上げ、美童などは十字を切っている。
そんな悠理の答えにも義正は決して笑わず、話を続けた。
「そうだね、悠理君の言うように『のろま』は遅いとかそういう意味もある。しかし、佐渡でいう『のろ
ま』はのろま人形のことなんだよ。」
「のろま人形?」
悠理は首を傾げながら考えてみたが、全くを持ってわからない。
「んー、そうだね、悠理君には少し難しいから実際に見せてあげよう。」
悠理が真剣に考え込んでいるのを見て、義正が言った。

「わーっ、あたしも見てみたいわぁ。」
「僕も!」
「おじさま、見せるってどうやって…」
「人形をお持ちなんですか?」

35 :鬼闇(14):04/07/28 00:26
可憐と美童は単純に喜んでいるが、野梨子や清四郎の心底驚いた顔を見て、義正は嬉しそうな
顔をしていた。
どうやら優秀な人間や、頭でっかちの人々を驚かせることに喜びを感じているらしい。
「家だけは古いからねぇ。」
そう言って義正は皆を蔵へと連れて行った。

一旦母屋を出て、義正は皆を蔵へと先導していった。
魅録は脇に停めていた自分の車を目にし、断りを入れていなかったことを思い出した。
「あっ、脇に車を止めさせてもらいましたけど、いいですか?」
「ああ、空いてるところに停めてもらって構わないよ。ただ、門の真ん中だけは困るな。人が通れな
くなってしまうからね。」
笑いながら義正が鍵を開け、皆を中に招き入れた。
「この家の蔵は三棟並んで建っているが、この真中の蔵には私の商売道具が入っているんだ。
佐渡の歴史の蔵書や古い道具などが置いてあるのさ。」
義正は棚にあった長持ちの一つを開けた。
「確か、この中に…」
中から丁寧に布が掛けられ、しまわれていた人形を一体取り出した。
「素朴なお人形ですわね。」
野梨子が人形を受け取り、まじまじと眺めていた。
「これが説経人形だよ。…で、こっちが文弥人形。」
布を払い、もう一体の人形を取り出し、可憐へ手渡した。
「さっきと同じように見えるけど?」
可憐は野梨子の持っている人形と顔を見比べてみたが、違いが全く解らない。
「さっきの説経人形に比べ、文弥人形は首が左右に動くんだよ。」
義正は可憐から再び人形を手にすると、中の仕掛けを動かして見せた。
「ほらね。」
なるほど、さっきの人形は動かなかったが、文弥人形は首が左右に動くように出来ている。
「文弥人形は説経人形が元になっていてね、説経人形遣いが文弥語りを合わせて作り出したもの
が文弥人形と呼ばれるものなんだ。それに、通常文弥人形は三人で一体を操るのだが、佐渡で
は一人で一体を操るから、世界的にも貴重な文化遺産って言われているんだ。」

36 :鬼闇(15):04/07/28 00:27
義正がもう一体、人形を見せてくれた。
他の人形と同じように、布で包まれていてものを丁寧に開く。
そこに現れた人形は、先ほどの日本人形のような美しいものとは異なり、間の抜けた愛嬌のある
人形だった。
「味のある顔っていうか…」
「変な顔。」
魅録と悠理が率直な感想を述べたのは、のろま人形だった。
「これがのろま人形。これは説経人形の幕間に演じられた狂言なんだよ。間抜けで正直者の主人
公・木之助、人のよい下の隠居、男好きのお花、貪欲でずる賢い仏師の四人で構成されておっ
てな、言葉は全て佐渡の方言で語られる。話や演目が変わっても最後はすべて木之助の放尿で
終わり、観客はそれを見て大笑いするのさ。少し品はないがね。」
「へぇー、面白そうだなぁ。」
「あたい、それなら見てみたいかも。」
能には興味を示さなかった魅録と悠理だったが、のろま人形は違ったらしい。
「やーね、ホント、下品なんだから。」
可憐が苦々しく呟いた。

美童がふと、棚に置いてあった木彫りの像を見つけた。
どうやらこの人物は武士のようだが、誰だったろうかと真剣に考え込んでいた。
「どうしたんです?美童。」
清四郎が、像とにらめっこしている美童に声を掛けた。
「清四郎、この像の人、知ってる?」
清四郎もしばらくその像を眺めていたが、教科書や今まで読んできた数多くの本の中でも見た
記憶がない。
「…見覚えがありませんね。」
清四郎でも解らないものは、当然自分にも解るはずが無い。
美童は義正に聞いてみることにした。
「おじさん、この像の人は誰ですか?」
「ああ、それは佐々の先祖で、佐々義房という人物だよ。昔、京の都で鬼を退治したと言われてい
るんだ。」

37 :鬼闇(16):04/07/28 00:29
「ええっ?鬼ですか?」
義正の言葉に美童は驚き、まじまじと像を眺めた。
清四郎はというと、佐々の先祖の像と聞いて安堵の溜息を漏らしていた。
どうりで見たことがない訳である。
「平安の頃、羅生門には鬼が出たといいますし、酒呑童子の話等は有名ですよ。」
「先祖代々語り継がれて来た話なんだが、その割には資料が残っていないんだよ。蔵の書は一通
り目を通してみたんだがねぇ。」
義正は残念そうに呟いた。

「お疲れでしょうから、早速お部屋へご案内しますわ。」
志津子が母屋へと戻ってきた六人を促し、部屋へと案内した。
皆には十畳の和室を二間あてがわれ、男女別に部屋を使用することにした。
といっても、襖を隔てた隣同士である。
今は襖を開けて、いつもどおり六人でくつろいでいた。
まだ夕食には早い時間だったので、清四郎は義正から借りた地図を開いてみた。
「それにしても面白い造りの町ですねぇ。東西南北四つの神社に囲まれて、その中心にも神社が
あるんですからねぇ。」
「これだけ神社が多いのも珍しいですわよね。」
清四郎も野梨子も地図を眺めながら言った。
「お寺が多いのは解りますけど、神社が多いっていうのは何かありそうで、嫌な気分にさせられま
すね。」
「清四郎がそんなこと言うなんて珍しいんじゃない?」
「言われてみれば確かにそうだよね。こんなに小さな集落なのにさ。」
清四郎の言葉に可憐と美童も不思議そうに口を開いた。
小さな山々に囲まれ、一辺が三キロにも満たない所である。
そこに5つも神社がある所は、他にはないだろう。

「でも、綺麗に碁盤の目に整備されていますわね。京都を模して造られたのかしら?」
「そういえば、佐渡にも清水寺や長谷寺に似ている寺があるよな。」
地図に目を落としたままの野梨子に、魅録も続いた。

38 :鬼闇(17):04/07/28 00:30
「呼び名は違いますけどね。やはり京からの流刑者が多かったので、京都を懐かしんで建てられ
たのだと思いますよ。」
清四郎は二人に向かって言った。

「なぁ、明日はどうすんだよ?」
それまで志津子から貰った菓子を黙々と食べていた悠理が、皆の話を遮った。
菓子もなくなり、どうやら明日の遊びについて何をするのか話をしたくてたまらなかったようだ。
可憐も声を張り上げた。
「あたし、泳ぎたい!さっき見た海、とっても綺麗だったもの。」
「そうですね、二ツ亀には海水浴場がありますし、花々の美しい遊歩道もありますから、泳げない
野梨子も堪能できますよ。」
清四郎の話にからかうような響きを感じ取った野梨子が、聞き捨てなら無いとばかりに青筋を立て
て言い返す。
「あら、私には海に入るなってことですの?」
「おや、僕はそんなことを言いましたか?」
「言っているのも同じですわ!」
そんな二人のやり取りに魅録が呆れ顔で呟いた。
「まーた、始まったよ。」
「勝手にやらせておけば?」
「あたいは知らないからな。」
可憐と悠理もとばっちりを受けたくないのか、止める気は全く無い。
放っておいたら何時までもやり続ける二人だ。
「清四郎も野梨子もいい加減にしなよ。せっかくの旅行なのに。」
誰かが諌めなければ、と思ったのか美童が口を挟んだ。
「はいはい、解りました。とりあえず今日はゆっくりと休ませてもらって、明日から思う存分、海を
堪能させてもらいましょう。」
幼馴染が絶対折れないことを知っている清四郎は、さっさと白旗を揚げた。

                  【つづく】


39 :名無し草:04/07/28 15:34
>豊作×和子
甘ったるいミルクティーに朝から大笑いしましたw
ほんとにすごい甘いの飲まされてそうで・・

>鬼闇
原作の絵が動き出したようでうれしいよ〜
コマごとの皆の顔がイメージしやすい書き方、グッジョブです!

40 :名無し草:04/07/29 20:55
>豊作×和子
すごく面白かったです。和子さんならやりそうです、この展開。
>「それに、私たち、いい共犯者になれると思うのよね」
是非結婚後の共犯者っぷりを読ませてくださいまし〜!>作者様

41 :名無し草:04/07/30 00:45
『鬼闇』うPします。
オカルト方向に進んでいきたいと思っていますので、苦手な方はスルーして下さい。
>38の続きです。

42 :鬼闇(18):04/07/30 00:47
翌日、皆は早速行動を開始した。
清四郎、魅録、悠理の三人は早朝から海岸で磯釣りを楽しんでいた。
一方の美童、可憐、野梨子は大野亀まで続く遊歩道を散策し、自然を満喫していた。
六月にはキバナカンゾウが鮮やかな黄色い花を付け、まるで絨毯を敷き詰めた様に美しくなる大
野亀だが、七月の今はレンゲツツジとカワラナデシコのピンクがポツリポツリと咲いている程度だ。
しかし、日本三大巨岩の一つであり、160mの一枚岩で出来た大野亀は日本一美しいと言われ
ている。
その頂上から眺める紺碧の海はとても美しいもので、いくら眺めていても見飽きる事は無かった。

三人は、遊歩道の途中にある賽の河原にも立ち寄ってみた。
洞窟の中に作られた本尊の祭壇の下には、大きな波が打ち寄せては轟音とともに砕け、白い飛
沫を振りまいていた。
本尊の足元から岩場にかけて、白い小さなお地蔵様が無数に置かれており、風雨にさらされたそ
の表情は心なしか翳りを帯び、掌を合わせている。
周りには無数の石が積まれ、沢山のおもちゃや風車がカラカラと音を立てて回っていた。

「悠理は来なくて正解よね。」
「ええ、又何が起きるかわかりませんものね。」
「どうして石が積んであるのかな?」
帰り道、美童は野梨子に聞いてみた。
「子を亡くした親がその冥福を祈って積み上げますのよ。親より先に亡くなってしまった子は賽の
河原、つまり三途の川を渡ることが出来ませんの。ですから、三途の川の川原で孤独に石を積む
亡き我が子を慰めるために、歌を歌いながら小石を積むのですわ。」
「どうして渡れないの?」
可憐も不思議に思ったらしい。
「親よりも先に死ぬ事が一番の親不孝と申しますでしょ?それと同じですわ。幼い、十歳にも満た
ない子供が父、母、兄弟を思って川原で傷つきながらも石を積みますの。それを地獄の鬼が壊し
てはまた積み、また壊されてはまた積むという、癒される事のない大罪なんだそうです。」
自然と三人は無口になり、思い空気がどんよりと辺りを覆っていた。

43 :鬼闇(19):04/07/30 00:48
「…出来ればもう来たくないわね。美童、ちゃんとお参りしておいた方がいいんじゃない?」
重くなってしまった空気を払おうと可憐が軽口を叩いたのfだが、美童は本気で怒っていた。
「何て事言うんだよ!僕がそんなことするわけないじゃないか!それに、そういう可憐こそヤバイ
んじゃないの?」
この美童のセリフに可憐が反撃する。
「何いってんのよ!あんたじゃあるまいし。ちょっとしたジョークなのに、本気で怒るところをみると
心当たりでもあるんじゃない?」
「可憐!」
野梨子は睨み合っている二人を眺めながら、軽く溜息を吐いた。
「どっちもどっちですわ。」

佐々の家へ戻った三人を悠理が玄関で待ち構えていた。
「遅いぞ、お前ら!」
「だって、美童が!」
「だって、可憐が!」
可憐と美童は、まだ根に持っているようでそっぽを向いている。
「どうしたんですか?二人とも。」
二人の声を聞きつけて来た清四郎が、野梨子に聞いた。
「ちょっとした口ゲンカですわ。それよりも、そちらは大漁でしたの?」
清四郎の後ろから、魅録が興奮した声と共に現れた。
「ああ、任せてくれよ。アイナメとウミタナゴがわんさか釣れてさ。面白いのなんのって。」
「あたいだって釣ったんだじょ!早速今日のお昼は、あたいたちが釣った魚で刺身祭りだーい!」
悠理は心底嬉しそうに万歳をしていた。

「昼食の準備が出来ましたよー!」
台所の方から志津子の声が聞こえてきた。
「はーい!」
悠理が元気良く返事をして駆けて行った。
「ほら、可憐も美童も行きますわよ。」
まだそっぽを向いている二人に声を掛けながら、野梨子も家の中に入って行った。

44 :鬼闇(20):04/07/30 00:49
「早く行かないと悠理に全部食べられてしまいますよ。」
「そうそう、あいつならやりかねないよな。」
清四郎と魅録も中へと消え、残った可憐と美童はそっぽを向いたまま台所へ向かった。

釣れたての美味しい魚に大満足した後は、二ツ亀から続く美しい海で海水浴を楽しんだ。
「やめてよ、美童ったら!」
さっきまでのケンカはどこへやら、可憐と美童は二人楽しそうに水を掛け合っている。
「きゃーっ!悠理ったら、やめてくださいな!」
悠理はプカプカとクラゲの様に漂っていた野梨子の浮き輪を掴み、引っ張り回しては悲鳴を上げさ
せていた。
「おい、悠理、少しは手加減してやれよ。」
野梨子の響き渡る悲鳴に、魅録が同情気味に言った。
しかし、悠理にしてみれば野梨子を楽しませようとしているだけであり、野梨子の足が届かない所
に恐怖を感じるという心理が解らないのである。
「ただ浮いているだけじゃ、つまんないだろ?」
再び、浮き輪をグイグイ引っ張って泳ぎ始めた。
「よ、余計なお世話ですわ!きゃーっ!」
「野梨子も気の毒に…」
そんな二人を眺めながら、清四郎がポツリと呟いた。

海を充分満喫し、佐々の家に近づいて行くと、どこからともなく太鼓の音が聞こえて来た。
「何だ?」
「お祭りでもあるんですかね?」
魅録も清四郎も、太鼓の音に耳を凝らした。
「でも、お祭りにしては激しい音ですわ。」
確かに太鼓の音は叩くというより、打ち鳴らすような力強い音である。
「お祭りだったらいいな。あたい、夜店とかだーい好き!」
「そんなことぐらい、聞かなくてもわかるよ。」
「ホント、お金持ちのお嬢様なのに。いつ夜店の味を覚えたのかしらねぇ。」
悠理の期待に満ちた満面の笑みに、美童と可憐が呆れながら言った。

45 :鬼闇(21):04/07/30 00:51
「父ちゃんも好きなんだよ。」
「ああ、おじさま、お祭りとか盆踊りとか好きそうよね。」
可憐は悠理の答えに妙に納得していた。
「櫓の上で、腕まくりして太鼓叩いてそうだよな。」
「似合いますな。」
清四郎と魅録も腕組みをして、うんうんと頷き合っていた。

「ただいまー!お腹空いちゃったよー!」
悠理が元気よく家の中に入って行った。
「お帰りなさい。もう少しでご飯ですから、もうちょっと待ってね。」
志津子が笑いながら迎えてくれた。
「お祭りでもあるんですか?」
清四郎は居間へと入ると、新聞を読んでいた義正に声を掛けた。
清四郎に続き、他のメンバーも居間へ入ってくるのを目にした義正が、新聞を畳んで面を上げた。
「ああ、今年は『鬼封じ』から丁度千年目に当たる年なので、明日、千年祭を行うんですよ。」
「鬼封じ?」
魅録と美童が顔を見合わせる。
「ええ、昨日我が家の先祖佐々義忠が鬼を退治したと言いましたが、その義忠がこの町を造りなさ
ったと言われてましてね。義忠の功績を称え、『鬼封じ』と呼ばれる祭りを行うのです。昔からの慣
わしですよ。」
野梨子も可憐もその奇妙な祭りを興味深げに聞いていたのだが、悠理が待ってられないとばかり
に口を挟んだ。

「そんなことはどーでもいいけどさ、祭ってことは夜店とかいっぱい出るのか?」
悠理が期待に満ちた眼差しで義正を見つめた。
「勿論、この家の近くにある刀守神社の周辺には、たくさんの夜店が出るよ。」
「やったーっ!」
悠理は諸手を上げて喜んでいる。
そんな悠理を呆れ顔で見ていた五人に義正が言った。
「今、鬼太鼓をやっていますから、見て来られてはいかがですか?」

46 :鬼闇(22):04/07/30 00:52
六人は表へ出ると、神社の前の広場へと向かった。
十分も歩かないうちに鳥居が現れ、やがて社が見えてきた。
辺りには太鼓の音が古のリズムを刻み、青と金色の何かがチラチラと目に飛び込んでくる。
既に境内には人垣が出来ており、六人は空いている場所を見つけて中を覗き込んだ。
そこには、頭に手ぬぐいを巻き付け、和太鼓を打ち鳴らし続ける年配の男性と、青い衣装と鬼の
面を付けた人物が、右手で刀を持ちながら金色の髪を振り乱して舞っていた。
しばらくして、赤い衣装の鬼も黒髪を振り乱して踊りに加わった。
太鼓の力強い躍動と、鬼の激しい情熱の舞。
あたかもそこには本物の鬼が舞っているかのように見えた。


夕食の席には祖母の菊江も加わった。
義道は、祭りの準備の為の寄り合いがあると言って出かけていた。
「昨日は悪かったの。ちぃっと体調が悪かったもんだから。」
「もう良ろしいんですの?」
野梨子が尋ねると、菊江は心配いらないというように明るく答えた。
「ああ、昨日今日といっぺー休んだから大丈夫さ。私は菊江、よろしゅうな。」
「あたい、悠理。よろしくな、ばっちゃん!」
久方ぶりに賑わった食卓に、菊江も心底嬉しそうだ。
皆はテーブルいっぱいに出された日本海の恵み溢れる夕食に大満足し、食後に志津子が出してく
れたお茶を飲みながら談笑を続けていた。
又、賑やかな食卓に上機嫌の菊江はことさら饒舌で、皆が話に聞き入っていた。

「皆は何故この島が佐渡島って言われるか知っとるか?」
「さぁ?」
「何で?」
可憐と美童が顔を見合わせた。
「昔から日本人は神様を大事にしてきた。八百万の神と言うてな、草花は勿論、田んぼや川、沼、
そして物にも神様はいるという考えじゃ。中でも日本人が一番大事にしていたのが、田んぼの神
様『さの神様』じゃ。だからの、神様に関係するものにはみんな『さ』がつくのじゃよ。」

47 :鬼闇(23):04/07/30 00:53
菊江の話に清四郎が頷きながら、後を続けた。
「例えば、『さくら』ですが、『くら』は神様がおわす座、という意味で、『さくら』とは田の神様がいると
ころという意味なんですよ。そして、その神様にささげ物をする時、地べたに直接置くのは良くない
ということで、のせた器を『さら』、備えた飲み物が『さけ』又は『ささ』とも言いますね。神棚に必ず
付き物の『榊』というようになったんですね。」
「そう、だからこの島の佐渡島は、神様が渡った島ということになるのさ。」
ふぇっふぇっふぇと菊江が笑った。

「とても勉強になりましたわ。」
菊江の話に聞き入っていた野梨子は感動の面持ちで口を開いた。
「そう考えると面白いもんだな。」
「へぇー、日本って何にでも神様がいるんだ。」
「じゃ、昔からお花見とかやっていたのね。」
「お花見ならあたいも大好き!」
皆がそれぞれに感想を述べ合い、話はより一層盛り上がっていく。
そんな賑やかな六人を、菊江は優しい眼差しで見つめていた。
「そうか、そうか。そういう行事はたんとやらんとな。佐渡には伝統文化がたーんと残っておる。人
形芝居、能、鬼太鼓もそうじゃな。」
「人形なら昨日おっちゃんに見せてもらったじょ!」
「薪能も昨日拝見しましたわ。」
悠理と野梨子が、昨日見せてもらった人形や能を思い浮かべながら言った。

「鬼太鼓って、さっき見たヤツ?」
魅録の言葉に、菊江はより詳しく説明してやった。
「そう、ここ佐渡にしかない伝統芸能でな。鬼の格好した踊り手と太鼓を打ち鳴らす人とが奉納す
る舞でな、厄病息災、魔除けとして奉納するのさ。ただ、どうして鬼の格好をするのかはわからん
がの。」

48 :鬼闇(24):04/07/30 00:54
「昨日も言ったとおり、鬼は平安の昔から京の都に出没したとか、羅生門に現れたとか言われてい
ます。」
「外国人も知らない時代は鬼と呼ばれた事もありましたわ。」
清四郎と野梨子の話を聞きながら、ふと可憐が頭に過ぎったことを口にした。
「この町の名前と関係あるのかしら?」
「どうして?」
美童は不思議そうに可憐へ聞き返した。
「鬼来里なんて、鬼が来る里ってことでしょ?」
「ああ、そう言われてみるとそうですね。」
清四郎も、可憐の言葉になるほどと感心していた。
菊江はお茶を一口すすり、再び話を続けた。
「この鬼来里には昔からの言い伝えがあるのさ。『千年の時を経て鬼が現れし時、4つの御霊と2
つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に宿り、再びこの世に光溢れん』。佐々義忠が亡くなる
間際に残した言葉と言われておる。わしもこの町の年寄り達もこの言い伝えを代々孫子に伝承し
てきた。しかし時代が変わり、千年もの年月が経った今は本当かどうかもわからんけどな。」

「ま、今の時代に鬼って言われてもなぁ。」
「そうだよ、信じろって言うほうが無理なんじゃない?」
魅録と美童が笑いながら言った。
そんな二人に苦笑しながらも、菊江は生きてきた年数を感じさせるような重い口調で言った。
「そうかもしれんがのう、昔から今まで伝わって来た言葉だからこそ、蔑ろにしてはいかんとも思う
のだがな。」
「伝説をバカにしちゃいけません。伝説ということは、全てが事実ではないにしろ、起源となる史実
や根拠がなければ伝説にはなりませんからね。」
清四郎が真面目な顔で答えた。

                  【つづく】

49 :名無し草:04/07/31 04:32
>鬼闇
作者様の深い知識にいつも感心させられっぱなしです。
これからの展開が楽しみです。

50 :名無し草:04/07/31 12:58
>鬼闇
じっくりと読ませていただきました。
「さくら」=「さ(神)」+「くら」などの話、すごく面白かったです。
千年の時を経て、伝説の鬼が蘇るのでしょうか。続き楽しみにしています。

51 :リレー・もし無人島に 平行世界その2:04/08/01 01:29
http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/559の続きです。

 いつもの内装のおかしなヘリは使用中のため、一同は剣菱グループのどこかの子会社の名前が書いてあるヘリで出発した。
現在、美童が管理人から届いた長い長いFAXを読みあげているのにそろって耳を傾けている。
FAXには島の設備や備品、マニュアル等の在り処、注意事項をはじめ、管理棟のあらゆる電子錠の暗証番号などがこと細かく記されていた。

 ヘリの中は乗客用の座席は二列しかなく、前列にはおやつをむさぼる悠理、FAXを覗き込む美童と可憐。魅録はすました顔の野梨子と表情の読めない清四郎に挟まれている。

「電気は管理棟周辺のみ常時供給しています。ログハウス方面には管理棟にございます配電盤の入力電源をONにすることにより通電します。うへえ、図入りで操作法が書いてあるよ。魅録、わかる?」
なるべく後ろを見ないようにしながら美童が話を振る。

「必要ありませんよ」 間髪を入れずぴしゃりと清四郎が言った。
「ああ、そうだな」 魅録が同意すると、美童は肩をすくめて先を続けた。

「井戸水は定期的に水質検査を行っており飲用に問題ありませんが、水は貴重なので節水に努めて下さい。
当島自慢の温泉は管理棟そばに露天風呂にしつらえてあります。私どもは『玉の肌湯』と呼んでおります」
「うっわあ、すっごく楽しみ」
「あんなに嫌がっていたのに現金だな」
「考えようによってはさ、ダイエットできて、温泉で磨いてきれいになれるよ」
はしゃぐ前列とは対称的に沈黙が後列を支配している。



52 :リレー・もし無人島に 平行世界その2:04/08/01 01:32

「見えましたわ」 ふいに野梨子が口を開いた。
海のまん中にぽっかり浮かぶ緑豊かな島。
海岸沿いの少し開けたところに立派な管理棟と露天風呂らしき屋根、作業小屋か倉庫らしい建物。それらからちょっと離れた木立の影にログハウスらしき屋根がいくつか見えた。
数分後、ヘリは管理棟近くに着陸した。

「わーい、一番乗りぃ!!」 元気よく悠理がヘリから飛び出す。それに続く笑顔の美童。
「着いたわね」
「着きましたわね」 可憐と野梨子は不安げにあたりを見回す。
魅録と清四郎は無言でヘリから荷物を降ろしだした。
その時。

「えっ!? ウサギ???」  「ガァャー」
驚く声を遮るようにして耳障りな鳴き声があたりに響き渡った。

一同が目にしたのは...。我が物顔で闊歩する孔雀と、ぴょんぴょん跳ねるウサギの群れだった。

--------------
2レスになってしまい、すみません。
思いつきで無人島には野生化した孔雀(凶暴)とウサギ(人懐っこいけどすばしっこい)が生息しているという設定にしました。
どなたか続きよろしくお願いします。



53 :名無し草:04/08/01 16:52
無人島リレーなどが始まったところに申し訳ありませんが、
有閑キャッツを再開させます。
まずは嵐さんのところで過去ログを読んであらすじを
まとめてみました。(長いです)
嵐さん、いつもお疲れ様です。

********

巷を騒がせる怪盗がいた。往年のコミックからキャッツアイと呼ばれる彼女たち。
盗むものの一貫性もつかませず、謎めいた文言の予告状を出し、警察を翻弄していた。
スペイン王家に伝わるアレキサンドライトのネックレス。
七色の宝石を持つ王冠、プロミネンスクラウン。
これらを彼女たちは警察と対峙しながら見事に盗み出していた。

キャッツアイは美しき三姉妹。
太陽のネックレスを持つ長女可憐は宝石商に引き取られ。
月のイヤリングを持つ次女野梨子は茶道家元の家に引き取られ。
星の指輪を持つ三女悠理は財閥会長に引き取られていた。
彼女たちはVIPの子供が集う聖プレジデント学園に勤務し、情報収集の場としていた。

彼女たちを追う対策チーム専属の刑事も三人。
武道の達人で三人組の頭脳でもある清四郎(医者の息子)。
機械マニアで大型バイクを駆るピンク頭の魅録。
女性受けする甘いマスクで情報収集担当の美童。


54 :有閑キャッツあらすじ2:04/08/01 16:54
表向き財閥会長令嬢である悠理は、時宗の仲介で互いの正体を知らぬまま清四郎と見合いをし、惹かれあう。
キスを交わし、結婚を前提とした付き合いを約束する。
その直後、悠理は清四郎がキャッツ担当チームの刑事だと知ってしまう。

また、可憐はアレキサンドライトを手に入れるために潜入したパーティーで魅録と惹かれあう。
美童は野梨子に惹かれ、可憐と野梨子にいいように情報を聞き出されてしまう。

三姉妹は父の遺した死のメッセージにたどり着くため、自分たちがばらばらに養女に出され守られた理由を知るため、父の散逸したコレクションを集めているのだった。
(母親が生きているのかはまだ謎。)
また、彼女たちが予告状を出して目立たねばならない理由はまだ不明である。(本家流なら生きている母親や真の敵へのメッセージ?)

番外編の百合子の回想によると、三姉妹の実の父は彼女の従兄。他界している。彼は一つの失敗から没落したという。
そして三姉妹がそれぞれ養女に引き取られることは彼の遺志に反したことだったようである。
まだ彼女は悠理たちに詳細は話していないのか、彼女が知っているだけは話したのかは不明。とりあえず三姉妹は詳しいことはまだ知らない。

可憐はアレキサンドライトとプロミネンスクラウン、三姉妹の宝石から、皆既日食が起こるその年の6月5日に何かがあることにうっすら気づく。

55 :有閑キャッツあらすじ3:04/08/01 16:55
そして次なるキャッツの獲物は死の呪いがかけられているとされる絵画「三姉妹」。
オールドミスの三姉妹が住む豪邸・一乗寺邸の奥深くに所蔵されていると言われる絵画だ。
一乗寺家は謎が多く、変人が多く、当主の歴代の妻たちは死もしくは発狂という形でしか屋敷を出られなかった。
三姉妹の長女紅子と次女鈴蘭はそっくりな老女。三女琴子は決して姿を見せない(幽霊?人形が好きらしい)。
一乗寺邸は罠まみれであり、死臭が漂っている。二階の北側、琴子の部屋には決して入らないように使用人たちは厳命されている。
好奇心に負けた使用人たちはいずこへかと消えていた。

そこへ三人娘は潜入。可憐と野梨子はメイドとして、悠理はコック見習い(偽名・剣持悠介)として。
そしてやはりそこで変装した姿で悠理は清四郎と再会、野梨子と可憐も清四郎と悠理の関係を知る。

変装した姿で美童に会った野梨子は、琴子の姿を見て心惹かれる美童の好奇心を利用して彼が琴子の部屋に忍び込むように誘導する。
彼に額にキスされ良心が痛む野梨子。
また、可憐も同様に魅録と遭遇。琴子の部屋の警護を警察にさせてそこの鍵を開けさせようとする。
魅録は変装中の彼女に可憐の面影を見る。

夜中、屋敷中の者に睡眠薬を飲ませ、行動を開始する三人。
野梨子は鍵が閉まったままのはずの琴子の部屋に向かう開かずの扉が開いていることに気づく。
彼女の目の前でそこへ入っていったのは琴子に魅入られてしまった美童。


56 :有閑キャッツあらすじ4:04/08/01 16:59

一方、琴子専用の配膳エレベーターに乗って潜入する悠理(本当は鍵を盗むことになっていた)。
皆が眠り込んでいることに呆れ、やはり開かずの間に潜入する清四郎と魅録。
エレベーターから飛び出してきた悠理を見て、清四郎はそれが彼女ではないかと気づく。
だがすぐに停電。確信を得られぬまま彼女は琴子の部屋へと飛び込んで鍵を閉める。
魅録は清四郎が少年の後姿に悠理と見合い相手の名前を呼ぶのを聞いていた。
ドアを開けようと躍起になる清四郎をどけて、蝶番を銃で撃つ。

可憐は野梨子からの連絡で開かずの間に美童を追って潜入すると聞いていたが、あまりに遅いことと悠理と連絡が取れないことから自分も行動を始める。
一方野梨子は美童に引き続き琴子に捕われ、人形にされていた。

琴子の霊の気配に怯え、走り出した悠理は人形だらけの部屋の中で、野梨子と美童の人形を目撃する。
背後から琴子に襲われそうになる悠理。その時、ドアの蝶番が銃で吹き飛ばされた。

*********

三姉妹編が未完結のため少し詳しく追ってみました。
4レスも使ってしまいましたが、続けて本編書きます。
本編は2レスです。短くてすいません。

57 :有閑キャッツアイ:04/08/01 17:02
http://houka5.com/yuukan/thre/t19-1.htmlの350までの続き

(銃声?!)
可憐は階段の途中でその音を聞いた。
嫌な予感が胸をざわめく。
連絡が取れない妹たち。正体不明の琴子。開かずの間。不気味な噂。

いや、あの音は日本の警察官が使用するニューナンブマグナムの音だ。
野梨子は運動音痴とはいえ、へまをするとは考えにくい。
悠理がへまをした?
いや、しかしいくらなんでも発砲沙汰とは尋常じゃない。

可憐は階段を一気に駆け上がった。
(野梨子!悠理!無事でいて!)

 ************

悠理は背後の気配がすっと消えるのを感じた。
え?と彼女はドアのほうを見た。
白い影がドアの前にゆらめいていた。その横顔は冷たい無表情の少女だった。
いつの間にあそこまで・・・いや、あそこにいるのは・・・

「お人形さんがたくさん。嬉しいわ。」
空気は震えていない。その声は頭の中に直接入ってきた。
「でもみんなちょっと乱暴ね。おねんねの時間よ。」
彼女のか細い手がすうっと目の前の二人の男へと伸ばされる。
彼らは突如目の前に現れた少女に魂を吸い取られたように動けなくなっていた。


58 :有閑キャッツアイ:04/08/01 17:04
(この屋敷にこんな少女がいるとは?)
魅録は呆然としている。
(さっきまでこんな気配は感じなかったのに!)
清四郎もいささか混乱している。
白い手が魅録の額を撫でる。
彼はそのまま目を閉じると、その場に崩れ落ちた。
「魅録!」
清四郎は背筋が冷えるのを感じた。
冷や汗が顎を伝うが、なぜか指一本とて動かせなかった。これでは金縛りだ。

この部屋は?この少女は?
さっきここへ入っていった愛しい女性は?!

彼の頭は必死に事態を把握しようとしていた。
しかし体が動かないという恐怖は彼に焦りを生んでおり、考えはまとまらなかった。
自分が恐怖しているという事実にまた彼は愕然とした。

その時、彼が求めてやまない、その女性の声が聞こえてきた。
「やめろ!清四郎に手を出すな!」

清四郎はその声で覚醒した。
体が動いた。
目の前の白い影に逆に手を伸ばした。
しかし、その手は何も掠めず、むなしく空を切っただけだった。少女の姿は消えていた。

「悠理!無事か?!」
清四郎は冷や汗をぬぐうこともせず躊躇なく寝室の奥へと足を進めた。

              つづく・・・

59 :53−58:04/08/01 17:21
以上、ものすご〜く久しぶりに続けてみました。
でも話が大して動いてなくてすいません。
しかも事件が苦手なのでこれがマックスです。
本家キャッツが好きなので自分が書くと引きずられてしまう。

野梨子が引き取られた家についての記述は実はまだありませんでした。
勝手に書いちゃいました。(おい)
あと、可憐が保健医、野梨子が国語教師、悠理が体育教師です。

どなたか続きを・・・(他力本願)

60 :十三夜月:04/08/01 18:45
前スレの雑談に触発されました。
30分くらいでぱっと短編書いてみました。
情緒障害推奨派妄想型のお話です。

****************

「あの、菊正宗先輩、有閑倶楽部の皆様と召し上がってください。」
女子生徒が差し出したのは恐らく手作りのクッキー。
生徒会長・菊正宗清四郎はにっこりと営業用のスマイルを彼女とその友人へ返した。
「ありがとう。悠理が喜びますよ。」
すると、彼女の後ろにいる友人が言った。
「いえ、この子が上げたいのは・・・」
「やだ!言わないで!」
泣きそうな顔で友人を制してから、彼女は真っ赤な顔で僕の顔を見上げた。
「ごめんなさい、迷惑ですよね。だから倶楽部の皆様にって・・・」

ああ、そうですか。
と清四郎には合点が行った。

目の前の少女は可憐と同じくらいの身長。
野梨子のように黒々とした髪を腰まで伸ばしている。流れ落ちる滝のようだ。
色白の肌を今は真っ赤にさせている。
一般的に言えば彼女は美人の部類に入るのだろう。

「倶楽部の連中へと言うなら断りませんよ。ありがとう。」
彼女たちは彼がそれを受け取ってくれたことに純粋に感激したらしく、きゃあきゃあと騒ぎながら去っていった。
だが、彼がその言葉にこめた意味は別にあった。

───僕宛のプレゼントだったら断っていましたよ。

61 :十三夜月2:04/08/01 18:46
「なんだよ、これって清四郎宛だったんじゃないの?」
と美童は辛うじて悠理が皆にも分けてくれたクッキーをかじりながら言った。
放課後の部室。いつものごとく閑人6人組が集っていた。
「僕個人にと言うなら丁重にお断りしていましたよ。」
「もったいない話。」
美童が肩をすくめた。
「気がないのに受け取ったりしないところは誠実でいいんじゃないの?それが外面だけだったにしても。」
可憐は紅茶をサーブしながら言う。
「どっちにしろ食いもんくれる子は皆いい子だ。」
クッキーの半分以上を独り占めして悠理はにこにこしながら言った。

「なあ、野梨子はあいつが女と付き合ってる姿って見たことないんだよな?」
「ええ。そんなそぶりは見たことありませんわ。もちろん私の目の届かないところもたくさんありますけれど。」
魅録と野梨子がひそひそと話している声が聞こえてくる。
清四郎は内心で舌打ちした。この方面の追求はされたくない。
「清四郎って男にもてるけどゲイじゃないよね。でも女にも興味があるようには見えない。」
いつの間にやら美童も二人の会話に参入しているようである。
聞こえてますよ。
「あんたたちの年で女のカラダに興味がないってどうよ。」
可憐が言う。
「知るかよ。」
魅録の顔は真っ赤だ。自分に話を振るな、と言いたげである。
「医学的興味は充分ありそうですわよ。殿方の体との違いを冷静に調べてみそうじゃありません?」
「言えてる。」
野梨子の言葉に美童と可憐がそろって笑い出した。

62 :十三夜月3:04/08/01 18:48
すると、今までその話題も全く耳に入らない風情でクッキーをかじっていた悠理が急に顔を上げた。
清四郎と目が合う。
そこに漂うのは、ある意味共犯者のもの。
色めいたものとは程遠い冷たい分析がひらめきあう。

そうだ。僕と悠理は同類だ。それを彼女も気づいている。
この場にいる友人たちにはきっと僕たちのことを理解できないだろう。
幼馴染ですら、彼のことを理解できていないのだ。

もちろん僕らは対極にいる。生物学的性別が逆であることしかり。
彼女は単純で遊び好きの怠け者で、僕は学究心旺盛な人間だ。
彼女は本能と感情で動く。僕はほとんどの行動のもとは理性による分析だ。
彼女は友人たちを深く愛している。僕も友人たちを大事にしているが、その感情はどこか冷静だ。
彼女はそれどころか世界中を愛している。僕の愛情は自分をめぐる人たちへと限局され、それもかなりドライである。

そんな彼女との唯一の共通点、それは・・・

「これじゃ足りない。清四郎、食わないなら分けてよ。」
彼女は清四郎の取り分に手を伸ばした。
「はいはい。虫歯には気をつけるんですよ。」
クッキーが乗せられた紙ナプキンを彼女のほうへと寄せようとして、その指と僕の指とが触れ合った。
だが、それは物理的な接触でしかない。
僕たち二人にとってはそれだけでしかありえない。

63 :十三夜月4:04/08/01 18:49
「本当に悠理は食欲だけだな。お前ももう少し色気づいてもいい頃だろ。」
呆れたように言う魅録に悠理は舌を出して見せた。
「そんなん気持ち悪い。あたいはそんなん一生必要ねえよ。」
「あらあ、わかんないわよ。あんたの言ってたあんたより強い男が現れて恋に落ちるんじゃないの?」
からかうように言う可憐は絶対に気づかない。
一生という悠理の言葉が真実なんだと、きっと永遠に気づかない。

悠理は知っている。清四郎も同じなのだと知っている。

「そういう種類の人間もいるんですよ、可憐。」
清四郎は言いながら立ち上がった。
「は?そういう種類?」
問い返す可憐に応えず、彼は鞄を取った。
「じゃあ、帰ります。今日はSF研の会合がありますので。」

最後にもう一度悠理と視線が合うと、彼は少し微笑んで見せた。
悠理も片眉を上げて応えた。

清四郎が外に出ると、暗くなり始めた東の空にまだ満月まで2日ほど残した月が輝いていた。
どこか欠けた月は彼自身だった。そして悠理だった。
完全に見えるようで、どこか欠けている月。
いつか満ちるように見る人は思う。
だが、彼らと月とでは大きく異なる点がある。
彼と悠理は欠けたものが満ちることはないのだ。

64 :十三夜月5:04/08/01 18:55
悠理とは同類であるがゆえに分かり合える。
同類であるがゆえに二人がこれ以上近づくことはありえなかった。
彼女との結婚話が持ち上がった時、彼女とならうまくやっていけると錯覚した。
同じものを欠落しているのだから面倒もなかろうと思った。
だが、それは錯覚だった。
彼女との共通点はただその一点に過ぎないのだと忘れていた彼の失敗だった。

彼らが持たざるもの、それには無粋な名前がついている。

その名を、“性的欲求”と言った。

彼はいつか満ちる月をそれ以上見つめることはしなかった。
ただ、足を自分のいるべき場所へと無造作に動かした。

***************
終わりです。
悠理まで巻き込んでしまいました・・・
悠理総受け推奨のかた、申し訳ありません。


65 :名無し草:04/08/01 19:04
も、萌える……っ
死ぬほど萌えてますこういう清四郎。
乙!

66 :名無し草:04/08/01 20:34
>十三夜月
いいですね。こういう清四郎と悠理の関係も。
普通の人間(恋などを経験済みの)である他の4人とは
どうやってもわかり合えない、ある意味共犯めいた…。
なるほど…と、読ませていただきました。

>キャッツ
再開待ってました〜〜。
嬉しいです、今後も続きますように!!

>無人島 その2
こっちも好きです。可憐と野梨子が命懸けでバトルとかするとこ見たい!
夜な夜な語り合う魅録と清四郎も…!


67 :名無し草:04/08/01 21:13
Deep Riverうpします。
5レスお借りします。


68 :Deep River(43):04/08/01 21:15
ttp://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/624

動き出したか――

来客者が触れることもしなかったカップをテーブルの反対側から眺めながら、
清四郎は煙草を燻らせていた。
久しく稼動しなかった歯車は錆び付き、その働きを失ったはずだった。
しかし慟哭にも似た轟音を響かせながら動き出してしまった今、
その勢いを止めることは出来ない。
そう仕向けたのは自分であったはずなのに、この息苦しさはなんだろうか。
いつか必ず此の時が来る。その来たるべき日のために感情は捨て去ったつもりでいた。
しかし襲い来る感情の波は、それを遥かに越えるものだった。
『……聞かないほうが、知らないほうがいいこともあるんだよ……』
いつか、あの人に言われた台詞だった。
『それでも、僕は知りたいんです』
あの日の清四郎は、そう告げた。
自分は全てを有りの儘に受け入れることが出来る、そう思っていた。
知らないほうが良い現実などないと、事実を受け入れた上でも
自分は真っ直ぐ歩いて行けると、そう信じていた。
なんと傲慢だったのだろうか、と清四郎は自嘲した。

恐らく今頃、悠理は魅録に事の顛末を話しているに違いない。
だとすれば、勘の良い魅録のことだ、過去へ続く細い糸を見つけてしまうだろう。
彼がその糸を手繰り寄せたとき――剣菱万作は、どうするのだろうか。

清四郎は思惟の淵から浮かび上がると、煙草を揉み消し、
冷めてしまった珈琲を一気に飲み干した。

69 :Deep River(44):04/08/01 21:17
重い足取りで自室への道程を歩いていた悠理の肩に、ぽんと手が置かれた。
振り返ると、魅録が微笑みながら立っている。
悠理も自然に微笑み返しながら、横に並んで一緒に部屋へと向かった。
「昨日、ごめん。可憐の家に行っててさ」
「おばさんに聞いたよ。俺も急に来たからな、仕方がねえよ。
それより、このクソ熱いのにまた出掛けてたんだろ? 何処に行ってたんだ?」
悠理の足が止まる。それにつられて、魅録も歩みを止めた。
「悠理?」
「うん……言わないでおこうと思ったんだけど……」
何時になく不安そうな表情を見せる悠理に魅録は胸騒ぎを覚え、
その顔を覗きこんで訊ねる。
「どうした?」
「……清四郎に、会ってきたんだ」
魅録の表情が一変して、厳しいものとなった。
「どうして、あいつの居場所が分かったんだ?」
詰め寄るようにして問いかける魅録の胸を両手で押し止めながら、悠理は俯いた。
「黙ってて、ごめん。探偵を雇ってたんだ。さっき……連絡があって。
住処が見つかったって言うから、いてもたってもいられなくて」
「どうしてそんな危険なことをするんだ? 敵陣に独りで乗り込むなんて――」
言い募る魅録を見上げ、悠理はきっぱりと言った。
「清四郎は、敵じゃないよ。友達だろ?」
「悠理……」
「あいつ……苦しんでた。上手く言えないんだけど。
きっと、こんなことすんのには、なんか理由があるんだよ。そうに決まってる」
眦を微かに紅くしながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ悠理を前に、
魅録は自らの言葉を恥じた。

70 :Deep River(45):04/08/01 21:18
「それに――気になることを言ってたんだ」
「気になること?」
問い返す魅録を見上げながら、悠理が頷く。
「うん。怨むなら父ちゃんを怨め、って」
「万作おじさんを?」
魅録にとって、意外な人物の名前だった。
一連の清四郎の行動は、悠理でも魅録でもなく、万作への報復だというのか。
「そう。なあ魅録、どういうことなのかな? 
清四郎がこんなことすんのも、全部父ちゃんの所為なのかな?」
魅録は悠理を見詰めたまま、ふうっと息を吐いた。
「……多分……な」
そしてそれは、悠理にとって辛い事実に違いない。
父親の所為で、友人を一人、失ったことに他ならないのだから。
「あたい、父ちゃんに聞いてみるよ」
言い終わらぬうちに駆け出そうとする悠理の二の腕を捕まえ、魅録は諭すように告げる。
「やめておけ。慎重にいこう」
「でも……」
「俺に少し、時間をくれないか。清四郎が万作おじさんの名前を出したのには
きっと何か理由がある。単なる陽動作戦ではないだろう」
魅録は悠理をじっと見詰め、静かな声音で訊ねた。
「覚悟は、出来てるんだな?」
「覚悟?」
「清四郎の過去に、おじさんが関わっているのは間違いない。
ひょっとすると――いや確実に、お前が眼を覆いたくなるような形で、だ。
それでも、知りたいんだな?」
悠理は魅録の言葉に、大きく一つ頷いた。

71 :Deep River(46):04/08/01 21:19
万作と清四郎の過去に、直接何かがあったとは考えにくい。
余りにも年齢が離れすぎている。
寧ろ、実父であるという白鹿清州との関係を探るほうが妥当だ。
過去を紐解く鍵は、恐らく其処にあるのだろう。
魅録は剣菱邸の書斎に籠もり、先ずは万作の経歴を調べ始めた。
万作の年齢から清四郎の年齢を差し引くと、凡そ今の魅録ぐらいの年齢だ。
だとすれば……
魅録は万作の大学時代の卒業名簿を手に取った。
経営学部に万作の名が記載されている。
同じ頁を指で辿りながら清州の名を探すが、見当たらない。
学部が別なのか。
法学部から順に再度調べなおすが、やはり其の名はない。
見当違いか……
名簿を閉じようとした刹那、見慣れた名前が魅録の視界に飛び込んできた。
『菊正宗修平』
医学部の卒業者名簿に、そう書かれている。
「どういうことだ?」
思わず口に出して問いかけるが、答えを返す者など居るはずもない。
清四郎の実父は清州。
清四郎が報復しようとしているのは万作。
この二人に何らかの繋がりがあることは間違いないだろう。
そこに、第三の人物――清四郎の育ての父である修平の存在が絡んでいるとなると――
魅録は名簿を本棚に戻し、立ち上がった。
直接この三人に訊くには、まだ時期尚早だろう。
ならば――あの人に訊くしかあるまい。

72 :Deep River(47):04/08/01 21:21
久しく訪ねることのなかった友人宅の前に立ち、魅録は襟を正した。
以前は余り感じなかったが、疎遠になってしまった今となっては敷居がとても高い。
昔は撚れたTシャツでも平気で訪れていたものだが――
荘厳と呼ぶに相応しい門構えの前で、魅録は暫し懐古の念に浸った。
僅かに震える指でインタフォンを押し、返答が来るのを待つ。
『はい』
「松竹梅です」
『まあ、魅録さん? ちょっとお待ちになってね』
自分の爪先を眺めながら、何と彼女に尋ねればよいのかと自問していると、
目の前の門が開き、友人に良く似た風貌の母が顔を覗かせた。
「お久しぶりね」
「ご無沙汰しています」
「ごめんなさいね、野梨子は美童君に誘われて、今外出しているの」
「いえ、今日は……」
思いつめたような眸で自分を見下ろす魅録の視線に内心たじろぎながら、
野梨子の母は首を傾げた。
「今日は、おばさんにお聞きしたいことがあって、伺ったんです」
「……私に、ですの?」
「はい。……清四郎の出生に纏わることを伺いたいんです」
見る間に、野梨子の母の顔色が蒼くなった。
「私は、なにも……」
「ご存知ない、ということはないでしょう? 自身の出生の秘密は貴女から教えられた
と、清四郎から聞いているんですよ」
野梨子の母は項垂れたまま、額に浮き出た汗を拭った。
蝉の声が一際大きく響く。
魅録の背中を、つうっと汗が伝った。
「……お入りくださいな。此処でお話出来るようなことでは、ありませんし」
「お邪魔します」
言って、敷地内に一歩、踏み込んだ。

<続きます>

73 :名無し草:04/08/01 21:39
>無人島リレー
また始まりましたね! ユニークな動物たちがいるみたいで楽しそう?

>有閑キャッツ
まとめ乙です!
清四郎が悠理を確認したのは間違いなさそうですね。
今後二人の関係がどう変わるか……

>十三夜月
ちょっと変わった風味のお話でドキドキしました。
清四郎の欠けた部分は本当に埋まることはないのかなあ。

>DEEP RIVER
お待ちしてました! 人間関係めちゃめちゃ捩れてますね!
一体清四郎の出生にはどんな秘密があるのか、めちゃくちゃ気になります。
続きお待ちしております。

74 :名無し草:04/08/02 10:17
どうも。有閑キャッツ再開させたもんです。
早くミッションを終わらせたいので、少し設定を付け加えながら
お話を単純化させてみました。
たぶんものすごく先が見え見えな展開になったと思われます。
次から4レスいただきます。

75 :有閑キャッツアイ:04/08/02 10:18
>58の続き

───暗い!

部屋の奥へと足を進める清四郎は、まずそう思った。
そこに彼女の気配があるのに、その姿が皆目見えない。

一方、悠理は野梨子特製の暗視スコープで清四郎の姿をはっきり捉えていた。
とりあえず彼はあのわけのわからない霊のようなものにやられはしなかったらしい。よかった、と思う。
だがすぐに彼女のスコープの下の目が冷たくなった。
状況はかなり悪い。彼は刑事。捕まるわけには行かない。
以前に自分と互角に戦ったのは彼だ、と悠理は確信していた。
彼の発する気が、あの時のあの男と同じだったのだ。

更に、ここに長居するわけにも行くまい。
『三姉妹』を盗むと言う目的。
得体の知れない事態に陥った野梨子の救出。
そしてこの部屋のどこかからいまだ自分たちを見ている、あの化け物。

どうにか状況を打破しなければ!

悠理は清四郎の手が戸口近くの壁を探る様子をじっと見ていた。
恐らく照明のスイッチを探しているのだろう。
だがそこには彼が目指すものは存在しなかった。
「ちっ」
彼は我知らず舌打ちしていた。
たとえそこにスイッチがあったとしても、先ほど急に消えた照明はまだ復旧していないかもしれない。

76 :有閑キャッツアイ:04/08/02 10:19
あの彼が焦っている。
悠理はそれを見て取った。
あたいのために?

ずきん、と胸が痛んだ。
あたいは無事だと告げたかった。
だけどそれはできない。

お前を気に入ったから、お前が好きだから、あたいはキャッツだと明かすわけにはいかない。
不思議だ。見合いの席で会っただけの男なのに。
こんなにも惹かれているあたいがいる。

「彼が好きなの?」
悠理はまたしても背筋が凍りつくのを感じた。
すぐ背後にいる!

清四郎は彼女の気配が変わったことに気づいた。これまで以上の緊張が伝わってくる。
「悠理?悠理じゃないんですか?」
悠理は声が出なかった。畜生!こんな時に動けないなんて。
(清四郎にはこいつの声が聞こえてないのか?!)
「そう。彼には聞こえてないから平気よ。そのまま心の中で私にお話して、お人形さん。」
(あたいはお人形さんなんかじゃない!)
悠理は冷や汗を流しながら彼女に抗議した。
少女がくすり、と笑っている気配がした。
「大丈夫よ。彼もあれ以上はここに入って来れない。」
悠理が彼の方を見やると、清四郎も足が床に吸い付いたようになって唖然としている。
またも金縛りになってしまったので驚いたのだろう。

77 :有閑キャッツアイ:04/08/02 10:19
だが一つ問題が後回しになったと言っても悠理は安心するわけには行かない。
(お前は何者だ?この人形たちはなんなんだ?)
よかった。あたいは冷静だ。
焦燥は失敗を生む、それはいつも野梨子から厳しく言われていることだ。
すぐに取り乱すのはあたいの悪い癖だと思う。
(野梨子に何をした?)
「あら、このお人形さん、あなたのお姉さんなの?」
話しかけた以上のことを返され、悠理は固まる。
「私の可愛いお人形さんよ。ここにいればもう何も嘆くことはない。苦しむことも飢えることもないの。こんなに美しいお顔にそんなもの必要ないでしょう?」
悠理の目の前に姿を現した彼女はやはり美しかった。ころころと鈴が転がるように笑う。
「だから、あなたたちもこれ以上苦しまないようにしてあげるわ。お姉さんと、恋人と一緒なら寂しくないでしょう?」
「・・・っかやろ・・・」
「あら、声が出せるの?」
少女が目を見開く。自分の金縛りを先ほどの黒髪の男に続いて二人も解く人間が現れるとは。
今は男は素直に金縛りに縛られてくれている。
彼女の目には彼らに鎖をかける使役鬼の姿がはっきり見える。彼女だけに従う式神どもだ。
しかし悠理が身を震わせるたびに掌ほどの大きさの小鬼たちはぱらぱらと彼女の体から振り落とされていった。
「ざけんな!あたいらは人形じゃねえ!」

ぱ・・・ん
生ける人間には見えぬ鎖が砕けちった。

その瞬間、悠理の指輪が光る。
少女の中に、指輪の光とともに映像が流れ込んできた。

78 :有閑キャッツアイ:04/08/02 10:20
何不自由なく育てられた財閥の令嬢。だが彼女はいつもどこかに喪失感を抱えていた。
誰だ?あたいを呼ぶのは、誰?
二人の女性が彼女の手を取る。
「ねえちゃん。」と彼女は微笑んだ。
彼女たちは3つの天体に守られている。
太陽、月、星。

3美神!少女の胸に雷にも似たひらめきが去来した。

映像はまだ続く。

星を身にまとう女性が出会った。
彼は敵。
だけれど、惹かれずにいられない。
出会いは偶然?それとも必然?
姉たちの顔が浮かぶ。
捕まるわけにはいかない!
こんなところで捕まるわけにはいかない!

ねえちゃん!清四郎!

圧倒的な叫び。
それは生ける人間にとっては刹那だった。
2億6千万分の1秒の刹那。

少女は知った。
目の前の女性は自分と同じ。
二人の姉と、許されぬ仲の恋人を持つ・・・

                つづく

79 :74-78:04/08/02 10:29
なんか一人で勝手に話を進めててごめんなさい。
次回、待望の絵画「三姉妹」と可憐登場の予定・・・

野梨子と美童は戻ることが出来るのか?
気絶している魅録は果たして出番があるのか!?(ひでえ)
清四郎と悠理はどうなってしまうのか?

とりあえず可憐姐さんと幽霊さんの活躍に期待。
そういや紅子と鈴蘭がまったく出てきてない・・・

80 :名無し草:04/08/02 16:00
>十三夜月
Aセクですか…。納得できます。
切ないですね。大好き、こういうの。
>Deep River
待ってました!緻密に動きを追う文章と
底に眠る謎にドキドキしつつ、こんなに複雑に
絡み合うお話を書ける作者さまにただただ脱帽です。
>キャッツ
続き乙です!はらはらします…

81 :名無し草:04/08/02 16:37
>79
乙です。
でも、次も79タンが書くの?w
リレーじゃなかったっけ・・・

82 :名無し草:04/08/02 17:17
いんでね?
最近全然進んでなかったから、続き読めてうれしいし。

83 :79:04/08/02 17:32
>81
すんまそん。一気に事件をたたんじまわないと
再びこのまま膠着しそうなんで。
次回をできるだけ早くうpして次の方へ
バトンタッチします。


>キャッツ再開に感想くださった方々
ありがとうございます。私も一読者でした。
これからも頑張ります。
次回うp後は通常の名無しに戻ります。

84 :有閑キャッツアイ:04/08/02 21:18
>78の続き

すう────

涙が流れる。
その頬を濡らす。

悠理は思わず目の前の少女に見とれた。
白い肌、黒い髪、赤い唇。
女である自分が見とれてしまうほどだなんて。

そのとき清四郎は、何か白い光がぼんやりと暗闇に浮かぶのが見えた。
生きた人間の気配がするのとは別の方向。

───あれは?

悠理のほうは、変装中に手にするわけにもいかないので巾着袋に入れて首から提げていた指輪が、温かくなるのを感じた。
さっきこいつ光ったか?
動くようになった手でそれに服の上から触れてみた。
確かに温かい。

───とうちゃん?

どういうことかと思いつつ首を回した彼女の目に、清四郎も目にしている淡い光が見えてきた。
壁にかけられた平らな何かだった。かけられた布から光が零れている。

涙を流していた少女は悠理の視線に気づくと、にっこり笑ってそれを指差した。
そして、消えた。

85 :有閑キャッツアイ:04/08/02 21:19
あれはまさか・・・
悠理はそれに近づき、布に手をかけた。
その瞬間、淡い光がぼんやりと彼女を照らし出した。

太陽と、月と、星とが淡く光っていた。
3人の女神が悠然と微笑んでいた。
一人は太陽を頭上に捧げもち。
一人は月に口付けをし。
いま一人は星々のベールを暗闇へ向かって広げていた。

『三姉妹』だ。見つけた。
悠理はにっこりと微笑んだ。

清四郎には彼女の後姿と、煌く髪の輝きしか見えなかった。
暗闇の中に、それだけしか見えなかった。

彼女が額縁に手をかけるのが見えた。

いかん!盗まれる!
清四郎はふうっと深く息を吸い込んだ。
「フム!」
彼が気を込めると金縛りの鎖が吹き飛んだ。
その瞬間、部屋を覆っていた光が消えうせたので、彼には驚いて振り返った彼女の顔が見えなかった。

86 :有閑キャッツアイ:04/08/02 21:21
やばい!

悠理は瞬時に今せねばならないことを思い描いた。
一つ、清四郎から顔を見られないようにして逃げること。
一つ、野梨子をともかく救出すること。
一つ、三姉妹を盗むこと。

いかん、一度には無理だ。

一方で清四郎も逡巡していた。
目の前にいるのは紛れもなくキャッツだ。絵を盗ませるわけにはいかない。
しかし彼女は悠理かもしれない。彼の大事なあの人。

「一つ取引をしませんか?」
清四郎は低い声で言った。じり、と一歩彼女に近づく。
「その絵を盗まないと約束するなら、今回は見逃す、そういうことではいけませんか?」
また一歩近づく。もちろん相手からの返答はない。
「こちらも捜査官の大半が眠ってるんです。さすがにあなたたちにまでは手が回らない。」
それなら近づくなよ!と悠理は咄嗟に再び彼と肉弾戦を交えることを覚悟した。

「そんな取引必要ないわ。『三姉妹』も、妹たちもいただくわよ。」
背後から突然聞こえた声に清四郎は慌てて振り返ろうとしたができなかった。
麻酔薬をたっぷり仕込んだ吹き矢が彼のうなじに命中したのだった。
彼はその場に力なく崩れ落ちた。

87 :有閑キャッツアイ:04/08/02 21:25
「ねえちゃん!」
「遅くなってごめんね、悠理。」

意識を失った清四郎の背後から現れたのは、暗視スコープを装着し、やはり野梨子特製の吹き矢を手にした可憐だった。

「この部屋の主の経緯は老姉妹から催眠術で聞きだしたわ。詳しい話は後よ。」
「『三姉妹』は見つけたよ!でもねえちゃん、野梨子が!」
悠理が野梨子にとびつく。美童はその勢いで床に突き落とされてしまう。
「大丈夫よ。『三姉妹』をそこからはずして屋敷の外に持ち出せば琴子の力は消えるはずだから。」
情けないほどに顔を歪めた悠理は野梨子の胸に耳を当てて、ひどく遅いが規則正しく打つ鼓動が聞こえることを確認した。

可憐はつかつかと寝室に潜入すると、『三姉妹』に再び布をかけ、壁から取り外した。
すると、壁にハンドルのようなものが現れた。
彼女が無表情にそれを回すと、ベッドの頭側の壁が唸りを立ててスライドし、さらに続き部屋が現れた。

そこにはぼろぼろになった白いワンピースを着た白骨死体が鎮座していた。
長い黒い髪がその傍にうねって散らばっていた。いくらかはまだその頭に辛うじてしがみついていた。

「ひっ。」
「これが琴子よ。恋人との仲を反対され、父親の手でここに閉じ込められて餓死した哀れな少女。」

だから、彼女の“お人形たち”はみんな、つがいなの。
叶えられなかった彼女の恋を彼女はお人形に託したのよ。
彼女の姉たちは、妹の夢を守ってやっていたの。

「さ。あんたは野梨子をお願いね。あたしは『三姉妹』を運ぶから。」

可憐はかわいい末の妹に、ウインクを投げた。

           〜『三姉妹』みごといただきました。

88 :名無し草:04/08/02 21:28
************
というわけで強引にミッション完了しました。
足りないところの補完をお願いします。

琴子、死霊じゃなくて老婆の生霊でもよかったかと
思いつつ。

89 :名無し草:04/08/02 23:17
>キャッツ

素晴らしい!
自分も続きを書きたいと思いつつ、どうにも手が出ませんでした。

>いかん、一度には無理だ。
妙に冷静な悠理に笑いました。
で、颯爽と登場した可憐に惚れそうです。

まだ清四郎にとって、キャッツ=悠理とはなりきっていないけれど、
次回への伏線となりそうですね。
美童と魅録の活躍がなくて残念だったけど、これも今後に期待v

90 :名無し草:04/08/03 00:00
『鬼闇』うPします。
>>48の続きです。
オカルト方向へ進んで行きたいと思いますので、苦手な方はスルーして下さい。
毎回大量で申し訳ないですが、今回も大量うPですみません。

91 :鬼闇(25):04/08/03 00:02
三日目、祭りの日の朝はどんよりとした厚い雲で覆われ、雷鳴が轟く嫌な天気だった。
朝食を終えた六人は、あてがわれた部屋で今日の計画を立てていたのだが、微妙な天候を恨め
しそうに眺めていた。
「おかしいですわね、天気予報では晴れと言ってましたのに。」
野梨子はさっき見ていたTVを思い出しながら言った。
「あんまり当てにならないもんだな。」
魅録も空を眺めながら呟く。
「雨が降ったら、せっかくの祭りもだいなしじゃん。」
悠理は、雨が降りませんように…と、天に向かってお祈りを始めた。
――と、その時。
ズンッ!
地面から突き上げる様な大きな揺れを感じた。

「うわっ!」
「な、何だよ!」
悠理と魅録の叫び声とほぼ同時に、今度はグラグラッと左右に大きく揺れ始めた。
「キャーッ、地震よ、地震!」
「早く、安全な場所に避難しませんと!」
可憐と野梨子が叫んだものの、何処に避難すればいいのかわからない。
「安全なとこってどこだよぉ!」
美童の叫びが皆の気持ちを代弁していた。
「ともかく、大きな道具から離れて!」
清四郎の声と同時に、突然壁の方から箱がバラバラと落ちてきた。
「いてっ、いててっ!だーっ!」
何個か悠理の身体に当たったらしく、一人声を上げている。
やがて揺れが収まり、静けさが蘇ってきた。
一分にも満たない時間だったが、やけに長く感じた。

92 :鬼闇(26):04/08/03 00:03
「みなさん、怪我はありませんでしたか?」
義正が部屋へとやって来た。
「大丈夫ですわ。」
そう野梨子が答えた時、一人異を唱えたものがいた。
「大丈夫じゃないやい。痛かったじょー。」
悠理がしきりに頭をなでていた。
「どれ、悠理、ちょっと見せてください。」
清四郎が悠理の髪を掻き分け、傷が無いか確かめた。
「大丈夫、こぶにはなっているようですが、傷は負っていません。」
「そうかい、安心したよ。こっちも怪我人はいないのだが、なにしろ部屋の散らかり方がひどくて
ねぇ。」
義正は皆の無事を確認して安堵した様子だったが、これから家の中を片付けなければならない
手間を考え、一息ついた顔に翳りを帯びていた。
「僕達も手伝います。」
「そうですわ、こんなにお世話になっていますもの。それぐらい私たちにも手伝わせて下さい。」
清四郎と野梨子の言葉に、義正は有り難いような、申し訳ないような表情を見せた。
「有難うございます。とても助かります。私は母の所へ様子を見に行きますので。」
深々と頭を下げる義正に、可憐と美童が何でもないという風にサラリと答えた。
「気にしないで、おじさま。」
「そうそう、僕達、これくらいしか出来ないしね。」
義正は二人の暖かい言葉に微笑みを返し、菊江の元へ向かった。

佐々の大きな屋敷には部屋の数が多い。
そこで六人は、手分けして部屋を片付けることにした。
「あたしと野梨子でキッチンを手伝ってくるわ。そこが一番大変だと思うの。」
可憐の言葉に野梨子も頷き、早速台所へと向かって行った。
「僕は奥の座敷を見て来るね。」
「じゃ、俺は外を見てくるよ。」
美童と魅録も、それぞれの持ち場へと消えて行った。

93 :鬼闇(27):04/08/03 00:04
「あたいは何をすればいいんだ?」
清四郎は悠理に何をさせようか悩んだ。
この全くお嬢様らしくない悠理ではあるが、日本でも有数の財閥の娘であり、お嬢様であることに
変わりは無く、小さな頃から掃除は全てメイドがやっているに違いない。
おまけに、元々器用とは言えない悠理に、片付けろと言っても、果たして出来るのだろうか?
しばらく悩んだ後、結局悠理には今自分達が居るこの部屋を片付けさせることにした。
自分達にあてがわれた部屋である。
もし、乱雑のままであれば、全部終わってから片付ければ良いだけの話だ。
おまけに部屋に転がっているのは、いくつかの箱と巻物である。
恐らく掛け軸か何かだろうが、蔵にしまっていない所を見ると、そう高価な物でもないだろうと清四
郎は判断した。
「僕は居間や仏間を片付けますから、悠理はこの部屋をお願いします。いいですか、掛け軸か何
かだと思われますので、絶対に破かないように気を付けて下さい。解りましたか?」
「あたいだってそれぐらい出来るわい!」
悠理は嫌みたっぷりの清四郎にムカついて、つい叫んではみたものの、上手に片付ける自信は
あまりない。
「そうですか、それは何よりです。では、お願いしますよ。もし破ったら、弁償ですからね。お金で済
めばの話ですが。」
清四郎はそう脅かすと、部屋を出ていった。

「ちぇっ、いっつも一言余計なんだよな、清四郎は!」
プンプンむくれながらも、悠理は早速部屋を片付けることにした。
手始めに、自分の頭に降ってきた細長い箱を手に取ってみる。
「こんなのが当たりゃ痛いに決まってるよな。つーか、これがあたいじゃなくて野梨子だったら、
大怪我だったぞ。」
それは相当に古い桐の箱だった。
また、箱から少し離れた所にその蓋らしきものを見つけた。
蓋の表に書かれた達筆な文字は薄れ、何とかいてあるのかさえ解らない。
いや、ハッキリ書いてあっても悠理に読めたかどうかは疑問であるのだが。
先程の落下の衝撃で縛ってあった紐が切れたらしく、切れ端が下に落ちていた。

94 :鬼闇(28):04/08/03 00:05
「えーっと、中味、中味はと…、あった!」
1メートル程先に転がっていた巻物を見つけ、何気に広げてみる。
「何だ?」
それは奇妙な巻物だった。
見るからに鬼と思わしき姿に向かって、武士が刀を突き出している絵が描かれていた。
「何だこりゃ?桃太郎の話かぁ?つまんねーの。」
悠理はくるくると巻いて箱に入れ、蓋を閉じようとしたのだが、紐が途中で切れている為、蓋をのせ
ただけでやめた。

「これ、どっから落ちてきたんだ?」
地震に気を取られていた為、どこから落ちてきたのか全く解らない。
ふと壁を見ていると、一画に黒い空間が出来ていた。
そこには小さな戸袋が口をポッカリと開いていた。
地震の振動で開いてしまった戸袋は、壁と同じ色で出来ており、よく見ないと解らない。
悠理はそこへ落ちた巻物などをかき集め、押し込んだ後に扉を閉めようとした。
「この扉、取っ手も何もないじゃん。」
それでも何とか扉を閉め、口を開けていた戸袋が、あっという間に姿を消した。
「へんな棚だよな。閉めたら今度開けられないじゃんかよ。ま、片付けばいいんだよな。」
悠理はそう呟いた後、居間へと向かった。

居間には義正が戻っていて、清四郎と一緒に居間を片付けていた。
「終ったじょ。」
「有難う、悠理君。ここも、もうすぐ終るよ。」
義正がそういい終らないうちに、美童、魅録が戻ってきた。
「こっちも片付いたよ。」
「外も異常なかったしな。」
やがて、可憐と野梨子も戻り、全員が居間に揃った。
「これで全部終わりました。皆さん、有難うございました。今、冷たいお茶を持ってきますから。」
義正は礼を述べると、志津子のいる台所へと向かった。

95 :鬼闇(29):04/08/03 00:06
ふと、TVを見ていた美童が口を開いた。
「ねぇ、今の地震、全然ニュースになってないよ?」
「いくら遅くても、もう色々流れてもいい頃よねぇ。」
「海岸端ですのに、津波さえありませんのね。」
美童、可憐、野梨子の言葉に清四郎も首をひねっていた。
「そう言われてみれば…。おかしいですね。」
――まさか、ここだけの地震ってわけでもないでしょうに。

「お待たせしました、どうぞ。」
義正が、冷たい麦茶を持った志津子を伴って部屋へ入って来た。
「可憐さんも、野梨子さんも有難う。とても助かりましたわ。それと、悠理ちゃんも皆さんもご苦労様
でした。」
志津子はお茶と共に、冷えた水羊羹を差し出した。
「やったーい!あたい、水羊羹大好き!!」
悠理はいつものごとく、万歳をして喜びを全身で表している。
「水羊羹じゃなくても、口に入るものは何でも好きなくせに。」
可憐がポツリと呟いた。

「おっちゃん、ばっちゃんはどうだった?」
悠理が珍しく気の利いたセリフを口にしたたものの、目はしっかりと甘い物が苦手な男性陣の水羊
羹を狙っていた。
自分の分はというと、とっくに平らげてしまっている。
「ええ、大丈夫なことは大丈夫なんですが…。」
「どうかしたんですか?」
義正の歯切れの悪い言葉に、魅録が問い掛けた。
その隙に、悠理が隣にいる魅録の皿へと手を伸ばした。
魅録は呆れつつも皿ごと悠理にやり、悠理は嬉々として水羊羹にかぶりついた。
「外は危ないと言っても、どうしても祠まで行くと言い張るんですよ。」
義正にしては珍しく、溜息を漏らしていた。

96 :鬼闇(30):04/08/03 00:07
「祠ですか?」
悠理以外の五人が顔を見合わせた。
「ええ、家から北東に向かって五分程歩いたところに、小さな祠があるんです。」
「僕達も一緒に行っても構いませんか?」
義正の話に、興味を持った清四郎が訊いてみた。
神社が五つもある上に祠まで存在すると聞いては、一体何が祀られているのか見てみたい気が
したのだ。
野梨子や魅録の顔を見てみると、どうやら自分と同じ思いらしく、目が輝いている。
三人が行くとなれば残りの三名も付いて来るだろうし、嫌なら家に残っていれば良い事だ。
清四郎はにっこりと笑みを浮かべた。
「その方が母も喜ぶでしょう。有難うございます。」
義道は頭を下げた。
そんな微かな緊張感など全く気にしない悠理は、魅録の分も食べ終わり、次に清四郎の水羊羹を
狙って手を出した。
ピシッ!
悠理は手を叩かれ、慌てて引っ込めた。
「お前、甘いもの好きじゃないだろ?なんだよ、ケチ!」
「自分の分どころか魅録の分も食べたのでしょう?水羊羹は僕も好きなんです。」
菊江のことで安心したのか、二人のやりとりを見て、義正はハッハッハと声を出して笑った。


「あーあ、この祠、支柱にヒビが入っとる。」
祠の前では男性が二人、屈み込んで中を調査していた。
二人共同じ作業着を着ており、どうやら町の青年団の衆が、地震による建物の損傷を調査してい
るらしい。
「とりあえず、この柱をなんとかせにゃいかんから、この鏡を移さんとな。鈴木、お前、この鏡を箱
に入れろ。回収したら神社にでも置いてもらう事にしようや。」
「はい、佐藤さん。」
年長の佐藤が鈴木と呼ばれた若い男に向かって指示をしていた。

97 :鬼闇(31):04/08/03 00:08
「いかん!この祠の鏡を動かしてはならん!」
突然割って入ってきた声に、二人が揃って振り向いた。
その声の持ち主は菊江だった。
道子と倶楽部の面々に連れ添われ、祠の様子を見にきていた。
今日は『鬼封じ』から千年目に当たる。
菊江は今朝から妙な胸騒ぎを感じていた。
おまけに先ほどの地震である。
何か不気味な気配を感じられずにはいられなかったのだ。
「ばあ様!すみません、うちのばあ様がどうしても祠を見に行かねばならんと言って。」
青年団の衆に睨まれてしまったら、これから先、面倒なことになってしまう。
道子は何とか菊江を静めようと必死だった。

「佐々先生のとこのばあさまでねえか。ばあさま、どうして動かしちゃいかんのかね?」
佐藤が菊江に向かって凄んだ。
「昔から言い伝わったものじゃ。鏡、特にこの北東の祠の鏡は動かしてはならぬと。」
「そんなこと言ったってよ、移さないと仕事になんねぇがな。おまけに、そんなこと言ったって今の時
代の言葉じゃないわな。」
佐藤が苦笑いしながら答えた。
菊江の言葉を、まるっきり信用していないらしい。
そんな最中、清四郎も菊江のただならぬ様子を感じ、口を挟んだ。
「やめておいた方がいいんじゃありませんか?お年寄りの話を蔑ろにして、良い結果になった話を
聞いた事がありません。」
佐藤は渋い表情を浮かべていたが、菊江の言葉を真に受けるわけにはいかなかった。
「あんたの言いたいこともわかっちょるが、ほれ見てみなせ。ここが割れておるのがわかるだろ?」
清四郎が佐藤の指差した場所を覗き込んだ。
確かに祠の支柱に大きなヒビが入っている。
「ええ、確かに。」
「放っとくと、ここからどんどん傷んでいく。わしらは何も鏡を盗むわけでもねぇ。祠をきちんと直して
おきたいだけだ。」
鈴木も同じようにコックリと頷いた。

98 :鬼闇(32):04/08/03 00:09
「兎に角、鏡を動かさんと、修理も何も出来ないからな。」
佐藤は再び鏡に手を掛けようとした。
「いかんと言うとる!」
「僕もおばあさんの言うとおり、動かさない方がいいと思いますが。」
菊江と清四郎の言葉に二人はしばらく考え込んでいたものの、年寄りと、どう見ても島の者でない
若者達をやり過ごすことにした。
「はいはい、わかりました。」
佐藤は鈴木に向かって小声で耳打ちをした。
「とりあえず、このばあさん達が帰ったら動かすことにしよう。」
「そうですね。」
佐藤と鈴木は愛想笑いを浮かべた。
「じゃ、このまま修理しますから、安心してください。」
「そうじゃ。」
菊江は安心したように、皆を連れて家へと戻って行った。

「よし、帰ったな。じゃ、始めるぞ。」
「はい、佐藤さん。」
鈴木が箱を引き寄せ、蓋を開けた。
「こんな古ぼけた鏡なんぞに、何があるって言うんだ?多少の歴史的価値はあるかも知れんが。」
そう言って佐藤が箱に収め、近くの刀守神社に行こうと十歩も歩いた時――。
突然眩いほどの閃光と共に、耳を塞ぎたくなるほど凄まじい轟音が響いた。
ドーン!!
振り向くと祠に雷が直撃し、その姿は跡形も無く飛び散っていた。

「危なかったなぁ。ばあさまの言うとおりにしなくて良かったよ。祠は作り替えんといかんな。」
「そうですね。」
つい先ほどまで祠が建っていた場所を見つめ、二人は同時に大きく息を吐き、踵を返そうとした。
ふと、目の端に何かが揺らめいたような気がした。
目を凝らして見ると、黒い煙のようなものが、すぅーっと一筋立ち上った。
その煙は消えることなく、ゆらゆらと上っては広がっていく。

99 :鬼闇(33):04/08/03 00:10
「な、何だ?何か燃えたのか?」
佐藤はただ煙を見つめ、鈴木も口を開けたままボーッと眺めている。
二人の足は、まるで地中から押さえ込まれたかのように一歩も動けぬまま、ただ昇り続ける煙を
見ていた。
その間にも煙はどんどん広がり続け、見る見るうちに空を、そして町全体を覆い尽くそうとして
いく。
煙、いや、もう闇と言った方がいいかも知れない。
やがて、町全体が闇に覆われた。

「さ、佐藤さん…。」
鈴木の声は泣き声に近いものだった。
何かが現れる。
そんな恐怖に二人は怯えていた。
「これと、ばあさまが言っていたことは関係ないさ、きっとな…」
「そ、そうですよね、僕達が悪いわけじゃないですよね…」
「だから、さっさとずらかるぞ。」
二人はすくんで動かない足を、無理やり前へと進ませようとした。

キラリ。
鈴木は闇から金色に光る何かを見つけた。
「佐藤さん、アレ…」
そう声をあげようとした時だった。
突然巨大な腕が伸びてきて、二人は身体をもの凄い力で掴まれた。
「ぎゃっ!」
「うわっ!」
鏡の入った箱だけが、ゴトッという音を立てて地面に落ちた。
もがくことも声を出すことも出来ない程強い力で、体を拘束されていた。
二人は空中へと持ち上げられ、闇の中へと引き込まれた。

100 :鬼闇(34):04/08/03 00:12
「う、嘘だろ…」
鈴木は目を見開いたまま、閉じる事も視線を逸らすことも出来なかった。
そこで鈴木が見たものは。
頭部には鋭い二本の角、金色に光った目、そして耳まで裂けた口からは涎がダラダラと流れおち
ている。
――鬼だ。
それは正に鬼としか言いようがなかった。
「…あ…あ…」
鈴木は段々と鬼の口が近づいて来るのを感じた。
そして、耳に聞こえたのは、脳に直接響いてくるような重く掠れた声。
――人間を食うのは千年ぶりだな…
「ギャーッ!」
人間の断末魔の叫びが、町全体に響き渡った。

                    【つづく】


101 :名無し草:04/08/03 07:18
>有閑キャッツ
とりあえず終わらせてくれてありがとう!
私もずっと続きが気になってたのでスッキリしました。
あのとっちらかった話をよくまとめたなぁと感心しました。
萌えどころもあり、楽しませていただきました。

さぁ心機一転、次のミッションはみんなで頑張りましょう!

>鬼闇
実は今までスルーしてたんですが、ちょっと読んでみたら面白くて・・・。
一気に最初から読み返してしまいました。
いや〜食わず嫌いはダメですね。
これからは楽しみに待ってます!

102 :名無し草:04/08/03 16:34
>Deep river
続きが気になります。いったい過去に何が?!

>鬼闇
オカルトの王道ですね。うまい。

>有閑キャッツ
個人的には気絶したままの魅録が気になってたり。
突入する可憐に踏まれてたら笑える。

103 :名無し草:04/08/04 12:03
>鬼闇
今後の展開楽しみにしています。


104 :名無し草:04/08/05 11:25
<魅×野>の短編うpします。
苦手な方はスルーしてください。

105 :言葉にできないキモチ。あなたに伝えたいナニカ。<魅×野>:04/08/05 11:26
春。
私は聖プレジデント学園の高等部へと進学した。
新しくて、まだ硬い制服に袖を通すと新入生の出来上がりだ。
中学生とは明らかに違うほんのり大人の雰囲気を漂わせた高校の生徒たちの中へ入っていく。

高等部は中等部の学び舎のすぐ隣だ。
登校する場所は半月前とほとんど変わらない。
しかし、私はひどく緊張していた。

私の胸はもう痛いほどに、
―――そう、痛いほどに。
鳴り続けている。朝から、昨夜から、いや、もっとずっと前から。
なぜなら、今日からあの人が聖プレジデントにやってくるから。

いつものように清四郎と待ち合わせて学校へ向かう。
相変わらず余裕たっぷりの笑顔の清四郎は新入生とは思えないくらい大人びて見える。

清四郎と他愛ない話をしながら、だが頭の中はもうあの人のことでいっぱいだ。
学校で彼と顔を合わせたら何と言おう。

「おはよう。久しぶりですわね」
「今日から聖プレジデントの学生ですわね」
「その制服似合ってますわよ」

いろいろな言葉を思い浮かべるものの、いざとなったらきっと、うまく言葉が見つからないような気がした。
きっと黙って立ち尽くしてしまうだろう。
気がつかないうちに、じっと顔を見つめてしまいそうな気がする。
毎夜毎夜、夢に見ていたその顔を。


106 :言葉にできないキモチ。あなたに伝えたいナニカ。<魅×野>(2):04/08/05 11:27
正門の前で可憐と合流した。
いつもより気合の入った髪の可憐はほんとうに薄くだが化粧をしていて、とても綺麗だった。
どことなく彼女もそわそわして見える。

背後で女子生徒の大きな悲鳴が聞こえたので、振向かずとも誰が来たのかわかった。
「早くしろよーーっ! トロいな、お前!」
「と、トロいって君ねえ。君が無理矢理引きずってきたんだろ?」
「何言ってんだよ! 美童が女子生徒に囲まれて大変そうだったから救出してやったんだろ?」
「ほっといてよ。僕囲まれるの大好きなんだから……」
朝から悠理と美童が喧嘩している。微笑ましい光景に可憐と清四郎が笑う。
私は上の空であいそ笑いをした。
もうすぐ校舎が近い。

その時、あの人の声がした。

「おーーっす。おはよう!」
「魅録!!」

子犬のようにぴょんぴょん跳ねながら悠理が魅録に突進していった。
「こいつう、来たなー」
「来たぜーー」
ふざけて軽く殴り合っていた魅録がふと視線を私に向けた。
目が合うと、にこっと笑う。

心臓が大きく跳ねて音を立てた。
案の定、舌が上顎に貼り付いて声が出ない。

「今日からよろしくな」
「あ……」



107 :言葉にできないキモチ。あなたに伝えたいナニカ。<魅×野>(3):04/08/05 11:27
何か言わなければと思った私の目の前に、すっと見慣れたウェーブが現れた。
「こちらこそよろしくね、魅録。何でもわからないことがあったら『私』に聞いてね」
「サンキュー」
「クラス発表してるわよ、行こ」
可憐の腕がするっと魅録の腕に回されるのを私は呆然と眺めていた。
強引な彼女に引きずられながら魅録はこちらを振向いて、後でな、というジェスチャーをする。
私の横で美童がため息をついた。
「なんだ、そういうこと。せっかくスウェーデンから来たのにがっかりだな」

すっかり萎んでしまった気持ちをずるずる引きずりながら、クラス発表の場に向かう。
壁に貼り出された紙の前にたむろした生徒達をかきわけ、自分の名前を探す。
私のクラスに清四郎の名前は無かった。可憐、悠理、そして美童の名も。
ふぅーっとため息をつきかけた私の目が何かを捕らえた。

  松竹梅魅録

「よお。同じクラスだな、野梨子。よろしくな」

目の前にあの人、松竹梅魅録がいた。
鮮やかなピンク色の髪が揺れる。
「あ……、こ、こちらこそよろしく……」
差し出された彼の手を恐る恐る握って、握手した。

突然、その手にぐっと力が入ったかと思うと、彼に引き寄せられた。
えっと思う間もなく、私の体が彼にぶつかる。
私の背後を頭上に机を担ぎ上げた男子生徒の一群が通った。
「はい、どいてどいて。危ないよー」

ほんの一瞬だが夢にまで見たあの人に抱きしめられて、目がくらむような思いがした。
背中に回された手が温かい。

108 :言葉にできないキモチ。あなたに伝えたいナニカ。<魅×野>(4):04/08/05 11:29
「大丈夫か? 行こうぜ、クラス」
魅録が私の手を握って群衆から抜け出した。
目の片隅に私に視線をくれる清四郎が映った。

私を引っ張り出すためにつないだのかと思った手は、そのまま離されることなく、
魅録に手をとられながら私は歩いた。
無理矢理手を振りほどくこともできず、かといって積極的に握ることなどもっとできず
なるべく力を入れないようにした手をとられながら、私は歩いた。

魅録は片手をポケットに突っ込んで、あちこち面白そうに眺めながら歩いている。

さっき私を引き寄せた手が、背中に回された腕が、私と手をつなぐ仕草が
あまりにも手慣れていて少し私は癇に障った。

そんなふうに他の女の子と一緒にしないでください。

心の中で呟いたが、もちろん口にできるはずもなく。
そして心臓は相変わらず激しく踊り、
私は魅録に手をとられ、
魅録は平気な顔をして歩いている。

息を吸った。
そして一息に吐いた。

私の、私たちの高校生活の始まりだった。





おわり


109 :名無し草:04/08/05 13:36
>言葉にできない(以下略)
初々しくって可愛いですね。
可憐は野梨子の様子に気づいててわざと腕を組んだのかな?

110 :名無し草:04/08/05 17:01
>言葉に
高等部入学の頃って、今まであまり無かったから、
新鮮で面白かったです。
野梨子と魅録はどうなっていくんでしょう?
続きも読んでみたいです。

111 :名無し草:04/08/05 21:41
>言葉
わーい、魅×野待ってました。原作の二人の出会いの場面が
大好きなので、こういうのすごく萌えます。
続き、思いついたら是非うpして下さい!

112 :名無し草:04/08/06 02:03
清四郎×雅央(悠理のそっくりさん)の短編をUpします。
同性カプで、少々18禁的表現を含みます。
苦手な方はスルーして下さいますよう、お願いします。
5レスです。


113 :Fake―1:04/08/06 02:03

いつもの部屋で、僕はあの人を待っている。
801号室。
彼がこの部屋を選んだ理由を、僕は知っている。
だけど―――気付かないふりをする。


待ちくたびれてソファで転寝してしまった僕の前髪を、やさしい指が梳き上げた。
「…遅くなって、すみませんでしたね」
その手を取って、そっと頬に押し当てた。
清四郎さんは優しい瞳で笑い、キスをしてくれた。
それから、軽々と僕を抱き上げた。


シャワーに打たれながら、僕達はいつものように愛し合う。
だけど、唇が熱い。
いつもよりさらに激しく、彼は僕を貪り、食い尽くそうとする。

だって―――今日は彼女の、誕生日。



114 :Fake―2:04/08/06 02:04

僕がアメリカでの生活に疲れて日本に戻ったのは、1年と少し前だった。
秀明と別れた僕は、新しい恋人と暮らす彼を見ていられなかったんだ。

いろいろと世話になった剣菱夫人と迷惑をかけた悠理さんに、まず挨拶に行った。
彼女の気のいい仲間達は、同性愛者である僕を決して色眼鏡で見ようとはせず、
励ましてくれた。
夏休みに入ったばかりの彼らから遊びに行こうと誘われ、僕はその好意に甘えた。

「なー、魅録!!次、あれ乗ろーよ」
「あぁ!?もう勘弁してくれよ、悠理〜」
遊園地ではしゃぐカップルを見送る彼の、視線の意味に気付いたのは僕だけだ。
「あーあ、彼氏ができてもちっとも変わらないよな、悠理って」
「魅録が気の毒ですわ」
「いいのよ、あれで幸せなんだもの。ねえ、清四郎」
「そのようですな」
そう言って、清四郎さんはにこにこと微笑んでいた。
幼なじみである野梨子さんも、恋多き女である可憐さんも、そして、美童さんでさえ
彼の想いを見抜いてはいなかった。
彼らは、あまりにも近くにいすぎたんだ。

「ねえ、辛くないの?」そっと隣に立って僕は問う。
「…もう、慣れました」表情ひとつ変えず、彼は答えた。



115 :Fake―3:04/08/06 02:05

それまでは、仲間の誕生日は皆で祝う習慣だったらしい。
だけど、その日、清四郎さんはひとりぼっちだった。
悠理さんが20歳を迎える瞬間、彼女に「おめでとう」を言う役は、ただ一人の男が
射止めてしまったから。
そうして、幸せな恋人達は二人きりでバカンスへと旅立って行った。

ひどく酔っていた彼を見つけ出し、ホテルに誘ったのは僕の方だ。

「申し訳ないんですが、男性には興味がないんですよ」
そう笑いながらも、その人は僕を無理に振りほどこうとはしなかった。

派手なネオンを見つけて飛び込むと、彼は部屋のパネルを愛おしげに指で撫でた。
801という光る数字に、小さく「誕生日おめでとう、悠理」と呟く。



116 :Fake―4:04/08/06 02:07

彼は僕の瞳を覗き込み、躊躇いがちに頬に触れた。
唇に、自嘲気味な笑みが浮かぶ。
「どうして…こんなに似てるんです…?」
答えずに微笑み返すと、彼は唇を噛んだ。
「顔も、髪も、指まで…瓜二つなのに…なぜ、悠理じゃないんだ」

「手術したんだ。性転換も…だから、僕を悠理さんだと思っていいよ」
言いながら、震える指先を胸へと誘導すると、息を飲む音が伝わってきた。
「――なぁ、清四郎。抱いてよ」

彼女の声音を真似ると、その人の表情が悲しく歪んだ。



117 :Fake―5:04/08/06 02:08

何度その腕に抱かれても、いくら逢瀬を重ねても、僕達は恋人同士には
なれはしない。この想いが、成就することは、ない。
僕は愛されてはいない。ただ、必要とされているだけだ。


頬に落ちる熱い雫が汗ではないことを、僕は知っている。
喘ぐように、愛しいひとの名を呼ぶ切ない声を、僕は今日も聞いている。


「愛してる」と彼は言う。僕の中の彼女に。

僕は知っている。僕は、彼女の代用品だと。

彼は知っている。僕の想いを。僕が、彼女ではないことを。
彼女が決して手に入らないことを知るのと同じように。


それでも、僕らが離れることはないだろう。
いつか―――彼が一人で立てる日が来るまでは。


<終>

118 :名無し草:04/08/06 02:08
以上です。お目汚し失礼いたしました。
*悠理の誕生日がわからないので、
都合上、夏生まれの設定にしました。


119 :名無し草:04/08/06 07:33
>Fake
ヤオイは嫌いだけど、このお話は抵抗なく読めました。
ふたりの心情に説得力があるからかな。
雅夫君の切なさと
悠理を思うあまり退廃的な道に迷い込んでしまう清四郎がいい。

相手が野梨子でも可憐でもそうだけど清四郎は恋情の激しさゆえに、
ちょっと歪んだり病んでいる役回りが合う  ・・・ような気がするw

120 :名無し草:04/08/06 16:47
>Fake

私もヤオイは抵抗あるけど
このお話はいいと思った。
たぶん下地が悠理←清四郎だからなんじゃないかな。
自分の性を売り物にしてた雅夫君だからこその
切なさみたいなものがよく出てたと思う。

121 :名無し草:04/08/06 19:23
>Fake
最初801号室に爆笑したんだけど
雅夫が悠理の声を真似するあたりで泣きました。

泣こうが笑おうが萌えてる自分がおかしかったよ。


122 :名無し草:04/08/06 19:26
>121
に言われるまで気づかなかった801号室。
ずいぶんデカいラブホだな、とw

123 :名無し草:04/08/06 20:47
>Fake
はじめコメディかと(801号室だしw)思って読んでましたが切なくなりました。
私もヤオイは苦手な方ですが、するりと読めました。
大人っぽくて良かったです。
>122
その着眼点が受けるよw

124 :名無し草:04/08/06 21:23
>801号室。
>彼がこの部屋を選んだ理由を、僕は知っている。
>だけど―――気付かないふりをする。

彼がこの部屋を選んだ理由……やおい……

125 :名無し草:04/08/06 22:01
>Fake
凄く良かった。だけど、これだけ言わせて。
MMMとMTFは全く違うものだよ。

126 :名無し草:04/08/06 22:20
なに? MMMとMTFって?? 


127 :名無し草:04/08/06 22:46
>126
MMM:男性の身体で、男性の心を持ち、男性を愛する人。
MTF:身体は男性で、心は女性の人(だから一般に男性を愛する)。

128 :名無し草:04/08/06 23:03
>125,127様
Fake作者です。ご指摘ごもっともです。
個人的に、清四郎はゲイではないと信じているので、
完全な男同士というのは抵抗があり、手術をしたという設定にしました。
投稿した後に読み返して、やはりちょっとおかしかったかな…
と思っていました(雅夫に『僕』って言わせてるし)。
すみませんです。読み流してやって下さい。

801については、誕生日を真夏にしたかっただけで、
あまり深く考えていませんでした。
いろんな視点で笑っていただけて光栄(?)です…。
重ね重ね、失礼いたしました。

129 :名無し草:04/08/06 23:09
なんでこれにMMMやらMTFが関係あるのかわからない。
愛しい悠理にそっくりな男(たまたま同性愛者)と・・・って話でしょ。
わざわざ「これだけは言わせて」なんて主張、ここでどんな意味があるんだ?

130 :名無し草:04/08/06 23:12
いや、だからマチャオが手術したってのが問題なんでそ。
もう終わってる話なのに129がわざわざ蒸し返すことナシ

131 :名無し草:04/08/06 23:20
>129
(´_ゝ`)プッ

132 :125:04/08/06 23:30
うわ、なんか険悪だ?スマソ
>作者タン
わざわざありがd意図よくわかりました。
>129
確かに言い方悪かったかも。
でも「これだけは」じゃなくて「これだけ」
だから。そんなに主張したつもりはないのよ。
気を害したならごめん。

133 :名無し草:04/08/08 15:13
雅央といえば、雅央と関係のあった市会議員と悠理の話が読んでみたいなぁ

134 :名無し草:04/08/08 20:17
>133
白鹿流のお弟子さん達にも大人気な彼だねwイイカモ

135 :<暴走愛>:04/08/08 23:50
暴走愛うpします。
昼ドラ泥沼系なので、苦手な方はスルーお願いします。
清×可です。

136 :<暴走愛>第3章(16) :04/08/08 23:53
>>http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/552

花篭を手に小さなガラス戸を押して中に入ると、すでに狭い店内は客で埋め尽くされていた。
可憐のジュエリーデザイン教室での先輩で、この店のうら若きオーナー・立花が
客の対応にてんてこ舞いをしている。

「おめでとうございます、先輩。盛況じゃないですか、大成功ですね」
「ありがとう。最初は物珍しいのもあるからね。来月以降が勝負よ」
立花は慣れない化粧をした顔で微笑むと、肩をすくめてみせた。
可憐と立花が語らっていると、
ガラスケースを初老の男性と共に覗き込んでいた女性がオーナーに声をかけた。
「このデザインのブレスレットが欲しいのだけれど……」
艶々としたセミロングの黒髪が誰かに似ている。
何気なくその女性客の顔を見た可憐はあっと声を出す。
「和子さん!」

菊正宗和子は可憐の姿を認めると、驚いた顔をした。
「可憐ちゃん。驚いたわ」
「私の先輩が始めたお店なんです。素敵でしょ?」
談笑しながら、可憐は和子の連れらしい初老の男性に軽く会釈した。
和子は笑顔を崩さないものの、どことなくそわそわした様子だ。

可憐達に遠慮していた立花が商品の説明を始めた。
「申し訳ありません、こちらのデザインはブレスレットはございません。
 ご注文いただけましたら、お作りいたします。少々お日にちはいただきますけれど」
少々動揺した様子の和子は立花に作り笑顔を見せる。
「ああ、それならやめとくわ。あまりこっちに来ることないから、取りに来るのも面倒だし」
「もし良かったら私がお家までお届けしましょうか、和子さん。久しぶりにおじ様達にもご挨拶したいし」
可憐の申し出に和子は顔を上げた。


137 :<暴走愛>第3章(17) :04/08/08 23:54
紙のように白い彼女の顔に可憐ははっとする。
強張った顔で和子はしどろもどろで言い訳をした。
「ありがとう……相変わらず優しいのね、可憐ちゃん。でも、せっかくだけど、
 私もう、あの家には住んでないの。私だけじゃないわ。父も、母も……もちろん清四郎も。
 誰もいないの、あの家には。だから、そう。ブレスレットはいらないわ。
 とても素敵なデザインだけど、ありがとう。ごめんなさい」

そう言い残すと、和子はそそくさと連れの男の腕に手を回し、店を出て行った。


剣菱家の応接間で悠理は興味津々に指輪やネックレスを手に取った。
「へえー。可愛いデザインだな。いいよ、母ちゃん好きそうだし、それ全部もらっとくわ」
「毎度ありがとうございます」

可憐は微笑むとケースの蓋を閉じた。
さすが剣菱悠理。可憐が持ち込んだ先輩の店のジュエリー、全てお買い上げである。
先輩が泣いて喜ぶわ。
努力家でかつ才能も持った立花の喜ぶ顔が目に浮かび、可憐は嬉しくなった。
商売が終わると、さっそく可憐は和子の話を切り出した。

「へ。和子ねーちゃんも、菊正宗のおじちゃんも、おばちゃんも家にいないって?」
「うん。なんかワケありっぽいのよ。どう思う?」
「どう思うって……旅行じゃねーの。家族揃ってパリとか」
「そうじゃなくて……」

138 :<暴走愛>第3章(18) :04/08/08 23:55
「おい、悠理。ちょっと話があるんだ……ああ、失礼」
突然、ノックも無しに応接間の扉が開くと、神経質そうな顔をした剣菱豊作が顔を出した。
可憐は座ったまま少しだけ会釈をするが、豊作は構わず悠理に話し出した。
「今夜、銀座にオープンする剣菱大劇場に行ってくれ。七時からだ。遅れるな」
「何言ってるんだよ、突然! 今夜はダチの結婚式の二次会があるから無理だよ」
「二次会はキャンセルだな」
「無茶言うなよ!」
「文句言うな。普段好き勝手してるんだから少し位都合つけろ。わかったな、七時だぞ」
悠理の抗議の声にも耳を貸さず、豊作は言いたいことだけ言うと可憐に挨拶もせず
さっさと出て行った。

ぶすっとした顔で悠理はソファーに横になる。
可憐は豊作の行動に呆れ果てた。
確かに悠理は毎日遊び呆けているかもしれないが、それにしても本人の予定も聞かずに
あんまりではないか。
そう言うと悠理はため息をついて頷いた。
「しょうがないよ。昔っから兄ちゃんはああいう奴なんだ」



139 :<暴走愛>第3章(19) :04/08/08 23:55
どうしても和子の言葉が気になった可憐は、野梨子を訪ねることにした。
自分の部屋で花を生けていた野梨子は可憐の話を聞き終わった後も、しばらく黙って花を整えている。
可憐もしばらく花鋏の音に耳を傾ける。

高校を卒業して以来、女三人で遊ぶことはあっても、こうやって野梨子と面と向かって話すのは
初めてだということに思い当たる。
清四郎のことが自ずと彼女らにそうさせていたのかもしれない。
野梨子が聖プレジデントに進学を決めたことや、
そして清四郎がそれにも関わらず京都の大学を受験して合格し、
かの地へ移り住んだことからも清四郎と野梨子は別離したらしかった。
らしい、というのは可憐は一度として本人たちに確かめはしなかったからである。

清四郎が京都へ出立するその日、可憐は何のかんのと口実を使って見送りにも行かなかった。
美童の話によれば、清四郎が新幹線に乗り込むまで野梨子は唇を引き結んでじっと耐えていたが、
最後に清四郎が野梨子に「野梨子も体に気をつけて」と言った瞬間、涙が止まらなくなり
ハンカチで顔を押さえ嗚咽しながら彼が乗った列車を見送ったそうだ。

彼らの婚約の話はどうなったのだろう。
結納も結局しなかったようだ。清四郎と野梨子、どちらから婚約解消を言い出したのか。
ただ知っているのは、卒業ダンスパーティーの2,3日後、
清四郎が目の周りに誰かに殴られたような黒い痣を作って学校に出てきたことだ。
しかし、その痣の真相を知るものは誰もいなかった。
いや野梨子は知っていたかもしれない。

可憐は、と言えば何も知らなかった。
 そんなの。初めから私は清四郎のこと何も知らないわ。

彼女が知っていることと言えば、彼の唇、彼の体温、彼の指使い、彼の汗の匂い。
ただ肉の感覚のみを知って、彼の心は測ることさえ叶わない。
そう考えて可憐は苦笑した。
そう、私は何も知らない、清四郎のことを。今までも、そしてたぶんこれからもずっと。

140 :<暴走愛>第3章(20) :04/08/08 23:56
いつの間にか鋏の音が止んでいた。
花を活け終わり、可憐に向き直った野梨子がきちんと居住まいを正して話し出した。

「―――いつかお話しする日が来ると思ってましたわ、可憐。ずっと清四郎に口止めされていたんですけど、
 やっぱりいつかは分かってしまいますものね」
可憐は野梨子の様子を訝しく思う。
「……清四郎が口止め? 何の話なの?」
野梨子は黙って立ち上がると、可憐を誘って庭へ出た。
とっぷりと暮れた白鹿家の庭は暗く、ところどころにある常夜灯がほんの少しの灯りを提供している。
日が暮れて尚、熱い空気が可憐と野梨子を取り巻いていた。
敷石を踏みながら野梨子の後に続いて庭を歩くと、菊正宗邸が見えてきた。
大きな家には夜になっても灯り一つ灯っていない。

「和子さんがお話しされたことは本当ですわ。今あの家には誰もいないんですの。
 おじさまもおばさまも、和子さんも」
「野梨子……。どういうこと? 一体、何があったの?」

可憐は急に背筋に寒いものが走るのを感じた。
なぜだか無性に怖かった。
知りたくない。

野梨子は真直ぐ可憐を見上げ、苦しそうに顔を歪めた。
「可憐……。お願い。もう限界ですわ、彼―――。どうか、清四郎を助けてあげてくださいな」
「清四郎を、助ける……?」
「お願い、清四郎を助けて……。私では駄目なの……」
可憐の腕の中に野梨子が飛び込んできた。
思わず彼女を抱きかかえた可憐の目に一つの灯りが新たに飛び込んできた。

今、野梨子が誰もいないと言ったばかりの菊正宗邸の一室に、灯りが灯った。


続く

141 :名無し草:04/08/09 00:13
>暴走愛
続きが気になって、ずっと待ってました!
わけありの和子、バラバラになってしまった菊正宗ファミリー…
そして、その部屋に戻ったのは、やはり彼なのでしょうか。
やっと豊作も絡んできましたね。
またまた続きが気になってしまいます…


142 :名無し草:04/08/09 23:40
『鬼闇』うPします。
>>100の続きです。
オカルト方向進む上、グロテスクな表現も含まれますので、
苦手な方はスルーして下さい。

143 :鬼闇(35):04/08/09 23:43
「何だ?」
悠理の問いかけに野梨子が答えた。
「人の声…みたいでしたわね。」
「何の声だよぉ。」
「耳から離れないんだけど…」
可憐と美童の顔色は既に青ざめている。

佐々の家に着いた菊江は部屋へと戻り、有閑倶楽部の面々は義正のいる居間にいた。
青年団の衆が祠の鏡を移動させようとしたこと、それを菊江が止め、家に戻ってきたことを清四郎
が義正に話していた。
「変な考えを起こさなければいいのだが。」
そう義正が呟いた矢先の雷鳴と絶叫だった。

その声と同時に、魅録は既に立ち上がっていた。
「清四郎、行くぜ。」
「みんなは中に入っていて下さい。僕達で行きます。」
「気を付けておくれよ。」
心配げな義正の言葉に二人は頷くと、外へと飛び出した。

「おい、まだ十時過ぎだよなぁ。」
信じられないという表情で、魅録が腕時計を見る。
針は十時八分を指していた。
勿論夜の十時ではない。
「ええ、普通なら燦々と太陽が照り付けている時間ですよ。」
そこに太陽の日差しは全く無かった。
空は夜と見間違う位に闇で覆い尽くされていた。

144 :鬼闇(36):04/08/09 23:44
「だったら何故こんなに暗いんだ?それに、さっきの…」
――何かが聞こえる。
「しっ、魅録、黙って。」
清四郎は音に集中した。
魅録も聞き耳を立てる。
初めは幻聴だと思った。
否。
間違いなく耳に入ってくる音。
ムシャ、グシャ、ボリッ。
まるで、肉食動物が獲物を貪っているような音だ。
清四郎の背筋に冷たいものが走った。
「おい、何の音だよ…」
魅録の声も心なしか弱気になっていた。

ピト、ピト、ピト…。
雨が降ってきた。
外に立っていた二人に当たった。
心なしか、当たる雨が暖かい。
「清四郎!お前、怪我してるのか?」
「魅録、あなたこそ…。」
二人は自分の身体を見た。
そこには点々と赤く染まっている自分の洋服。
ピト、ピト、ピト…。
雨は当たり続ける。
清四郎は自分の腕を見た。
当たる雨が赤かった。
ねっとりした赤い雨。
「違う、魅録。これは雨じゃない、血です!」
「なっ!」
二人は血の雨をよける為に軒先へと廻り、しばらく茫然と立ち尽くしていた。

145 :鬼闇(37):04/08/09 23:45
二人は空を見上げていた。
やがて雨が止んだと思ったら、何かがバラバラと降ってきた。
「…今度は何だよ。」
どうみても空から降るにしては少し大きな何かが、あちこちへと降っている。
ドン!
二人の側にも、その内の一つが落ちて来た。
ゴクリという息を呑む音だけが辺りに響く。
声もなく黙ったまま、二人はそれを見つめた。
人間の手だった。
手首から先は無く、グシャグシャになった断面は、まるで獣か何かに噛み砕かれたようだ。
ドン!
再び音がした。
振り向きたくなかった。
しかし、自然と身体が音をたてた方へと向いていった。
そこにあったものは――人間の首だった。
まるでマネキンの首が転がっているようだったが、マネキンではない。
本物の首である。
その顔には見覚えがあった。
つい先ほど、祠の前にいた二人の内の一人である。
その首の断面は、手首と同じようにグシャグシャになっていた。
あちこちからは悲鳴が聞こえ、町には人影さえ見えなくなっていた。
二人は何かを探るように、再び闇を見つめた。

146 :鬼闇(38):04/08/09 23:46
「どうしたの?二人とも血だらけじゃない!」
可憐が二人の様子に声を上げた。
魅録のTシャツと清四郎のポロシャツは、まるで赤い水玉のように点々と血が付着していた。
「みんな、よく聞いて下さい。絶対に外へ出てはいけません。」
清四郎の何時になく真剣な表情に、皆の顔が強張った。

「なんだよ、何があったんだよ!」
悠理がたまらないとばかりに声を高くして叫んだ。
何があったか知りたいという好奇心が多少あるものの、それ以上に得たいの知れない恐怖が
悠理を、皆を覆っていた。
清四郎は皆の顔を一通り見渡すと、静かに口を開いた。
「さっき祠の前で合った人達が、何者かに惨殺されました。」

「殺された?」
今まで何度も殺人事件や、人が死ぬ場面にも不本意ながら何度か遇ったことがある。
それでも先の菊江の言葉と、それを嘲った二人が死んだ事に何かしらの恐怖を感じ取っていた。
あの絶叫がまだ可憐の耳について離れない。
「じゃ、さっきの悲鳴は彼らだっていうの?」
「恐らく彼らでしょう。しかし…」
清四郎にしては歯切れの悪いセリフに、悠理は嫌な予感がした。
「しかし?」
「恐らく、人間の仕業でないことだけは確かです。」
「人間の仕業じゃないとしたら、誰の仕業よ?」
可憐がもっともな質問を投げかけるものの、答えられるものは誰一人としていなかった。
「また悠理関係?」
心霊関係が苦手な美童が、悠理にちろっと視線を投げかけながら聞いた。

147 :鬼闇(39):04/08/09 23:47
「あたいは何も感じないじょ。」
悠理の言葉に頷きながら、清四郎はもっと信じられない言葉を口にした。
「これは心霊とは全く別物だと思います。幽霊は人を食い殺したりはしませんから。」
「食い殺す?」
悠理は冗談とばかりに笑い飛ばそうとしたが、上手く出来なかった。
「ええ、彼らは食い殺されました。あの絶叫の後、外に出た僕達が浴びたのは血の雨でした。この
格好を見れば一目瞭然だと思いますが。」
清四郎の淡々とした口調が余計に恐怖を感じさせた。

「…でも、それだけじゃ食い殺されたという事にはなりませんでしょう?」
野梨子が強張った表情のまま口を開いたが、清四郎の答えが一層回りの空気を重くした。
「外には首や手が転がっています。それはまるで猛獣にでも噛み千切られたような断面でした。」
「げ、それじゃオカルトかスプラッタじゃんか!」
悠理も信じられないというように声を上げた。

「ああ、外は正にそのとおりだよ。」
今まで黙って聞いていた魅録は、あの惨状が忘れられないのか、重い口調で答えた。
可憐や美童、悠理の顔からは血の気が引いている。
元々色白の野梨子の顔は真っ青で、血の気すら感じられない。
「信じられないのは僕達も同じですが、とりあえず、あの人達を止めようとした菊江おばあさんに話
を聞いてみましょう
清四郎の言葉に、皆が沈黙を保ったまま頷いた。

                 【つづく】


148 :名無し草:04/08/10 17:26
>鬼闇
ついに血が降りましたねー。
六人は鬼とどうやって戦おうというのでしょう。
せめて東京にいたら魅録手製の戦闘グッズとか、
剣菱百合子所有のダイナマイトとかありそうですがw
続きお待ちしてます。

149 :名無し草:04/08/10 21:28
暴走愛、お待ちしてました!!
またまた波乱の予感ですね…菊正宗家に、清四郎に
一体何があったのか。
可憐に縋るしかない野梨子が哀れだ(つД`)

150 :名無し草:04/08/11 15:21
「横恋慕」をUpさせていただきます。
内容は魅録、悠理、清四郎の三角関係で、暗い展開です。
苦手な方はスルーして下さるようお願いします。
前スレ>472の続きです


151 :横恋慕(69)魅×悠×清:04/08/11 15:22
息を乱していた悠理は、一瞬足を止めた後、橋の上からひらりと石畳に跳び降りた。
右手に何かを握り締め、左手にハイヒールをぶら下げている。
「悠理・・・?トイレに行ったんじゃ・・・」
驚きを隠せない清四郎の前で、悠理は口元で無理矢理笑おうとした。

中座したまま戻らない彼女を心配し、少し前に魅録が部屋を覗きに行った。
それを知っていた清四郎は後方へと視線をやったが、彼が出てくる気配はまだない。

「そんな格好で・・・裸足で、一体どう・・・」
「出てくのが見えたから・・・だってさ、こんなもん履いて走れないじゃん」
悠理は靴を放り投げると、自分を凝視する視線を躱すように目を伏せ、呆然とする男の胸元
に右手を突き付けた。
「・・・これ、やるよ」
慌てて受け止めた清四郎は、それがワインのボトルであることを漸く知る。
うっすらと埃をかぶったラベルを親指で拭い、彼は眉を上げた。
「悠理・・・これは・・・・・・」
「ソムリエに探させたんだ、一番おいしいやつ。卒業祝いに・・・」

それは15年前、二人が出会った年のワインだった。


押し黙ってしまった男を、悠理は不安げな表情で見上げる。
清四郎はじっと手元を見つめており、落ち着かない悠理は掌をドレスの腿の辺りにこすり
つけ、そのまま俯いた。


152 :横恋慕(70):04/08/11 15:23
どのくらい経ったのだろう。
清四郎は、ふと口元に薄い笑みを浮かべた。
「ありがとう、悠理。・・・友情の証、ですか?」
もう、すっかりいつもの落ち着きを取り戻している。
一瞬彼を見上げた悠理は、何か言いたげな表情を浮かべた後、下唇を噛む。
そして、そのまま流すように顔を横へと向けた。
「・・・お前、偉そうに言ってただろ。その年はワインの当たり年だ、って」
そっぽを向いたまま言った悠理の横顔を、清四郎はまじまじと見つめた。

何かの折りに自分が口にしたであろう蘊蓄を悠理が覚えていたことに、彼は驚いた。
だが、『おや、悠理にしては物覚えがいいですね』という軽い皮肉が口を突いて出そうに
なり、清四郎は小さく首を振った。
そんな軽口を叩けるほどには、自分達の関係は修復していないのだ、と。

「ありがとう」
清四郎はもう一度呟いた。
「あんなことを言ってしまった僕を、赦してくれるんですか・・・」
「・・・赦すとか・・・そんなんじゃなくて・・・だって・・・・・・」
頑なに顔を横へと向けたまま、悠理は答えた。くしゃりとその手がドレスを掴む。
「友人でいてくれるんですね。これからも、ずっと」
その言葉に、剥き出しの白い肩がビクッと震えた。

「ありがとう。じゃあ、遠慮なくいただいて行きます」
ワインを目の高さに掲げ、清四郎は笑顔で別れを告げた。


「清四郎!」

そのまま背を向けようとした彼を、震える声が呼び止めた。


153 :横恋慕(71):04/08/11 15:23
逡巡を見せながら、清四郎はゆるゆると振り返った。
そこには、真紅のドレスをくちゃくちゃに握り締めた女が、じっと俯いて立っていた。
エントランスの眩い照明が逆光になって、その表情を窺い知ることは出来ない。

「あの・・・あの・・・・・・」
悠理は何かを言おうとして、大きくかぶりを振った。
息をする度に、その胸が苦しそうに上下する。

「まだ、僕に何か?」
優しいが、どこかよそよそしい声で清四郎は言った。
後方へと視線を送り、二人きりでいるところを誰かに目撃されていないか確認する。
悠理の肩がまた一瞬跳ね、それから意を決したように頷いた。

「あの・・・あの時、さ。あたいと・・・本気で結婚する気だったのか?」

強い視線で、悠理は清四郎を見上げた。


二人の距離は1m。
隔てるものは、何もなかった。


154 :横恋慕(72):04/08/11 15:25
「いいえ」
数秒間、元婚約者を見つめ返していた男は、決然とそう言った。

「僕は・・・剣菱で腕を振るうチャンスを与えられて目が眩んだだけです。でも、それによって
あなたの経歴をひどく傷つけてしまったことは謝ります」
「・・・経歴・・・・・・?」
悠理の瞳を、失望の光がよぎった。
「だってそうでしょう?男はともかく、女性にとって、破談は大きなデメリットですからね」
「でも別に・・・あたいら、何もしてないし・・・」

清四郎は口を引き結び、それから大きく息を吐き出した。
どう言おうかと、考えを巡らせながら口を開く。

「・・・名目だけの婚約だったと言っても、世間はそうは思わないんです。特に・・・僕達
の場合はあんなに大々的に婚約発表をしましたし・・・」
「だけど・・・」
まだ何かを言おうとする悠理を、清四郎は右手で制した。
「でも、安心しましたよ。あなたには魅録がいる。そうでしょう?」
「魅録・・・?」
悠理は、思い出そうとでもするかのするように、恋人である男の名を反芻しながら
瞳を伏せた。握り締めた両の拳が、血の気を失って真っ白になっている。


155 :横恋慕(73):04/08/11 15:26
清四郎は頷き、微笑みを浮かべた。
「もう、中に戻って下さい。風邪をひいたら卒業式に出られなくなりますよ?」
俯いたまま佇んでいる悠理に、じゃあ、と声をかけ、彼は再び背を向けた。


「なあ、清四郎」
背中に向かって悠理が呟くと、振り向かないまま、清四郎は足を止めた。
「・・・こういうカッコしてれば、あたいだって一応・・・女に見えるだろ」
だが、彼は振り返らない。
「ねえ・・・・・・何か・・・言ってよ」

「・・・・・・悠理」
低い声に、悠理は身を竦ませた。
広い背中を見つめ、続く言葉を待つ。彼が、振り返るのを待つ。

「魅録と、とてもお似合いですよ。どうか幸せに・・・」
背中越しに言い、彼はそのまま歩き出した。


待って。
もう一度、赤く彩られた唇が動く。

だが、その声は彼に届かない。
後ろ姿はそのまま遠ざかって行った。二度と、振り返ることなく。



[続く]


156 :名無し草:04/08/11 17:54
>横恋慕
お待ちしてました。
切ないです。うおおおおおおん
悠理くんも清四郎君も素直になっちゃってください。
続きお待ちしてます。

157 :名無し草:04/08/11 21:35
>横恋慕
清四郎のアホーッ!

恋愛音痴らしい彼らしい話です。
うう、清四郎がもうちょっと素直になること祈ってます。

158 :名無し草:04/08/12 00:25
>横恋慕
清四郎諦めきり過ぎ!!
まさかこのままこの場面終わるのか?殺生だ・・・。って気分です。
ともかく二人が通じ合えるのを祈ってます。がんばれ悠理。

159 :サヨナラの代わりに (71):04/08/13 00:49
『サヨナラの代わりに』をうpします。
>http://hobby6.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1084442209/504の続きです。

「ちょっと、待ってくださいな」
あと少しで魅録の実家というところで、私は緊張のあまり息があがって立ち止まって
しまった。
「おい、野梨子、何そんなに堅くなってんだよ。俺の親がどういう親かって、よーく
 知ってるだろ?」 
前方から聞こえてくる声は、私とは対照的にリラックスした暢気なものだった。
もちろん魅録の両親に会うのは初めてじゃないし、千秋さんはいわゆる『お姑さん』と
いうステレオタイプから大いに外れるひとであることもわかっている。
けれど、だからと言って以前と同じ気楽さで会うわけにはいかない。
曲がりなりにも、“夫の両親”になるのだ。
下手に知ってる分、やりにくいと思わずにはいられないのが本音だった。
「野梨子、お前は頑張んなくていいの。男が頑張るのがウチの伝統だからさ」
壁に寄りかかって息を整えている私に、魅録が冗談とも本気ともつかない口調で言った。
ふと、頭の中に、おじさまの一生懸命な姿が浮かんでくる。
おじさまはいつも一途で、千秋さんだけを見ている。
私も、魅録に私だけを見てもらいたい。
でも、実際に魅録がおじさまと同じようになったらどうだろうと想像してみると、急に
肩の力が抜け、おかしくなって笑わずにはいられなくなってきた。
「そう、そんな感じだ。……じゃあ、行こうか」
魅録は私の緊張が解れたのを見て、手を差し伸べてくれた。
私は素直にその手を取り、魅録の隣を歩き始める。
尚も笑いを抑えられない私に魅録が不思議そうな顔をするので、私はさっきの自分の
想像を魅録に伝えてみた。
「……悪いが、俺はあそこまでは頑張れねえな」

160 :サヨナラの代わりに (72):04/08/13 00:51
私達は、魅録の実家の客間に通された。
魅録は気楽にいけばいいと言い続けていたが、客間に通されるところをみると、やっぱり
着物くらい着た方がよかったかしらという気になってきた。
「野梨子ちゃん、お待たせ」
魅録の両親が入ってきたのは、私達が通されてから10分近くたってからだった。
おじさまはチャコールグレーの、恐らくはちゃんとしたテーラーで仕立てたに違いない
スーツ姿で、千秋さんはダナキャランのノースリーブのロングドレスにジャケットを
羽織っていた。
二人は私達の真向かいに座った。
早速、千秋さんは煙草に火をつけて優雅に美味しそうに吸い始めた。
その落ち着きぶりは隣のおじさまのそわそわしている様子と対照的で、いかにも
らしくて私は微笑まずにはいられなかった。
「親父、千秋さん、俺、野梨子と結婚しますから」
魅録がはっきりと言い切ったのは、千秋さんが1本目の煙草を半ば吸い終えて灰皿に
押しつぶした時だった。

161 :サヨナラの代わりに (73):04/08/13 00:53
「野梨子ちゃん、ほんとに、こんなヤツでいいのかな」
「そうよ、考え直すなら今よ」
親父もお袋も何を言い出すかと思えば、俺を無視して、間髪入れず矢継ぎ早に野梨子の
気持ちを確認した。
ふたりとも、意外なほど真剣な表情で野梨子を見ている。
俺は完全に蚊帳の外に置かれてしまったが、親父とお袋が何を思ってそんなことを
聞いているのかはすぐにわかった。
ただひとり、見られている野梨子だけは、状況が飲み込めないのかきょとんとしていた。
「何言ってんだよ、ふたりとも。野梨子が俺でいいって言ってくれたからここに
連れて来てんじゃねえか」
「あんたは口出さないの。あたしも時宗ちゃんも、野梨子ちゃんに訊いてるんだから」
俺の言葉を、お袋はぴしゃりと遮る。
おれは仕方なく口を噤み、横を向いて野梨子を見た。
固まっていたその表情が、ようやく変化する。
野梨子は、まず俺に向かってニコリと微笑んでくれた。
それからわずかに両手をきゅっと丸め、照れ隠しか心もち俯いて口を開いた。
「おじさま、千秋さん。……実は私の方から、結婚してくださいと申しましたの」
聞いてる俺が気持ちよくなってくるほど、野梨子ははっきりと言ってくれた。
だがそれを聞いたふたりは耳にした言葉が信じられないのか、親父は目を丸くして
その場に固まり、お袋は急に煙草を取り出して震える手で何度もライターを擦っていた。

【続く】

162 :名無し草:04/08/13 13:19
>サヨナラの代わりに
ほのぼのカップルが、とうとうご両親にご挨拶ですか。
時宗ちゃんほど頑張れないって魅録は言うけれど、きっと時宗ちゃん以上に頑張っちゃうんでしょうね。
いいなぁ、野梨子。

163 :<暴走愛>:04/08/13 15:19
暴走愛うpします。
昼ドラ泥沼系なので苦手な方はスルーお願いします。

164 :<暴走愛>第3章(21) :04/08/13 15:21
>>140
菊正宗修平は何の味もしないウィスキーを惰性で喉に流し込んだ。
狭い部屋の中ですることもなく、ウロウロと歩き回り、やがて最後に窓辺に辿り着く。
夜の街に高速を行きかう車の光が忙しく行きかっていた。
 見慣れてしまったな、この景色も。

頭を愛娘の姿がよぎった。
風の噂に子供ができたと聞いた。何月に出産予定だったか。もうだいぶ腹が出ているだろうか。
ベッドサイドの机に置いた写真を手に取る。
まだ若い妻と幼い子供たちに囲まれた自分が、
首から紙製のメダルをぶらさげて照れ笑いを浮かべている。
和子が小学校四年、清四郎が小学校一年生の時の父の日に、二人から贈られたプレゼントだ。

夫婦喧嘩もあった、親子喧嘩もした。
でも多少のすれ違いは時間が解決してくれると信じていた、
それが家族の絆だと思っていたから。

修平はウィスキーをあおった。

まだ信じられない。
こんなにもあっけなく自分の家族が崩壊してしまうとは。
目に入れても痛くないほど可愛がっていた子供達が、自分を見切って出て行くとは。
そして、妻が、どんなに自分が忙しくて構ってやれなくても、
わかっていてくれてると思った妻までも、自分の前から消えてしまった。
お願いだ。
誰か俺の目を覚まさせてくれ。俺の肩を叩き、笑い飛ばしてくれ。
なに寝ぼけたことを言ってるんだ、と。
悪い夢でも見たのか、と。

酒が効いて感覚が鈍くなった指で写真の子供達の顔をなぞる。
「和子……。清四郎……」
五十をとうに過ぎた男の目尻から水滴が落ち、幼い和子と清四郎の顔を濡らした。

165 :<暴走愛>第3章(22) :04/08/13 15:21
清四郎が隣家の野梨子との結婚をやめると言い出した時、
おろおろする妻を尻目に、修平は比較的冷静にその報告を受け止めた。
野梨子と二人で話し合って決めたことだと言う。
それならば何も親が口出しすべきことではない。
もともと清州が持ちかけてきた時から、修平はこの縁談に無理があるのを薄々感じていた。
野梨子の痩せっぷりも、清州の追い詰められたような雰囲気も、そして息子のどこか諦観したような様子が
修平の心に疑問の種を蒔いていた。

隣家の娘のことは、小さい時から可愛がっており、昔はそれこそ清四郎の嫁にと願っていたので
二人の縁談が壊れたのは残念といえば残念だ。
しかし、結婚してからすれ違いに気づくよりは傷が浅くて良かった、と言うべきなのだろう。
だがこの件について清州がどう思っているのか、なるべく早く隣家を訪問しなきゃなるまい、
と時計を見ながら考える。今日はもう遅い。

「じゃあ、これで京都へ行く理由も無くなったというわけだな」
何気ない修平の言葉に清四郎は静かにこう答えた。
「いいえ。やっぱり僕は京都へ行こうと思います」

農学部を受験するという清四郎を修平が思わず笑うと、それまで淡々と喋っていた清四郎がわずかに表情を変えた。
「そんなにおかしいですか。僕が農学部を受験する事が」
息子の言葉に潜んだ怒気にも修平は苦笑することしかできない。

「農学部へ行ってどうするんだ、お前は」
「まだはっきりとは決めたわけではありませんが、果樹の研究をしたいと思っています」
「ほう。それで大学を出たらどうするんだ」
「院へ行きます」
「その後はどうするんだ」
「まだ考えていません。これから考えます」
ヒゲをいじっていた修平はため息をついた。
「清四郎、いろいろ興味があっていいことだが、器用貧乏になるぞ。
 悪いことはいわん。医学部を受けなさい」
「いいえ」

166 :<暴走愛>第3章(23) :04/08/13 15:22
黙って二人のやりとりを聞いていた和子が清四郎を見つめた。
修平の妻は困って夫と息子の顔を交互に見ている。

「どうしてだ。お前、医学は好きだろ?」
「嫌いではありません。むしろ医療の道へ進むつもりでおりました」
「それならなぜ農学部なんだ」
「……思うところがありまして」
修平が問い詰めても、清四郎はのらりくらりとかわすばかりで本心を言おうとはしない。
イライラした修平がつい「いいから、医学部にしとけ!」と言い放つと、
冷ややかな言葉が返ってくる。
「それは命令ですか」

思いもかけない息子の台詞に修平も清四郎の妻も言葉を失った。
さすがに妻が清四郎をたしなめる。
「清四郎! お父様に向かって何てことを言うんですか。謝りなさい」
そこへ修平が妻の言葉を遮る。
「いや、いい。どういう意味だ、清四郎。今まで俺たちがお前にああしろ、こうしろと口うるさく命令してきたか。
 俺たちはお前たち子供を自由にやらせてきたつもりだが」
「そうですね。あらかじめ用意した庭の中で自由にね」
「……なんだと」
自分の耳を疑った修平は我が息子の顔をじっと見た。
清四郎は父の目を見ようともせずに淡々と喋る。
「今まで自由に好きなことをやらせてもらってると思っていました。それは感謝しています。
 しかし、それはあくまでも父さんや母さんが作った環境の中で、の話です。
 僕は自分が……」

清四郎は最後まで喋り終わらない内に、修平に殴り飛ばされた。
悲鳴をあげて清四郎の母が息子をかばい、和子が修平の前に立つ。
「ちょっと! まだ清四郎が喋ってるのに何してんのよ! ちゃんと最後まで聞きなさいよ!」
「最後まで聞く必要ない。清四郎。お前がそんなに性根の腐った奴だとは思ってなかったぞ。
 今まで多趣味で通してきたのは伊達だったのか。自分の将来が決められなくてふらふらしてる奴に
 親を批判する資格など無い!」

167 :<暴走愛>第3章(24) :04/08/13 15:23
息子が口に手を当てて、出血を確かめている。
修平は息も荒く息子に怒鳴った。
「殴りたかったら殴れ。言いたいことがあったらちゃんと言え! 俺はそういうふうにお前たちを
 育ててきたつもりだ。親のせいで自分のやりたいことができなかったとは言わせないぞ」
清四郎は皮肉っぽく笑った。
「そんなことは言ってません」
「立て、清四郎! 殴りかかってこい! 負けはせんぞ!」
息子を挑発する夫に妻がすがりつく。
「あなた、やめてください。清四郎は和尚様のところへ通ってるんですよ」
「そうよ、やめてよ。もっと冷静になってよ二人とも」
「ワシは冷静だ!」
「どこがよ!」

唇の端に滲む血を手の甲で拭うと、清四郎は立ち上がった。
「親に本気出すほど馬鹿じゃありませんよ」
「お前は和尚のところで一体何を習ってきたんだ! 和尚のところでは相手の倒し方は教えても
 親への礼や他人への思いやりは教えないのか。だとしたらお前を通わせたのは間違いだった」

振向いた清四郎の目が一瞬光って見えた。
と、思う間もなく、物凄い勢いで何かが修平の顔に飛んできた。
清四郎以外の全員が息を飲み、全身を硬直させた。

168 :<暴走愛>第3章(25) :04/08/13 15:24

目を見開いた父の顔の1センチ手前で息子の拳が停まっていた。
眼鏡がずれた修平は情けなくも、清四郎の前で尻餅をついた。
清四郎は静かに父に宣言した。
「和尚を馬鹿にしたら、例え親父でも許しません」
夫にすがってすすり泣く母に頭を下げた。
「すみませんでした」

部屋から出て行こうとする息子に向かって振向きもせず母が叫んだ。
「あなた、お父様に向かって何てことを……! 出て行きなさい、清四郎。出て行きなさい!!」

一瞬足を止めて清四郎は答えた。
「はい。そうします」

続く 

169 :<暴走愛>:04/08/13 15:31
前回>139で「清四郎が目の周りに誰かに殴られた……」とありますが、
今回「頬を殴られた」ことにしてあります。
「目の周り」を飛ばして読んでください。
すみません。

170 :名無し草:04/08/13 22:38
「横恋慕」をまた少しUpさせていただきます。
>155の続きです

171 :横恋慕(74)魅×悠×清:04/08/13 22:40
卒業式を無事に終え、僕は漸く部室に辿り着いた。

答辞を読み上げている間、どうも悠理の様子がおかしくて気になったのだが、隣にいる魅録が
彼女を支えていたから、できるだけ視線をそちらにやらないように気を付けていた。
魅録がついている。僕が心配することなど、何もない。そう言い聞かせながら。

「いやぁ、さすがだね、菊正宗君。いい答辞だったよ」
笑顔で歩み寄って来た校長や、ミセスエールと挨拶を交わす間も、僕はいつの間にかあいつの
姿を探していた。
そのくせ、下級生に握手を請われれば、ついにこやかな笑顔を作ってしまう自分に苦笑する。
見回せば、僕と同様に愛想笑いを浮かべる野梨子がいる。
抱えきれないほどの花束を両手に、派手に愛嬌を振りまく可憐もいる。
美童に至っては、記念写真をねだる女生徒に囲まれ、ちょっとしたハーレム状態だ。
だが・・・あいつはどこにもいない。魅録も、いない。

やっと人の波を抜け出し、保健室を覗くが閉まっている。
僕はそのまま部室へと足を向けた。


扉を開けた瞬間、唇に指を当てる仕草をする野梨子と目が合った。
どうやら、彼女も早々にファンの追求を躱すことに成功したようだ。
音を立てないように後ろ手にドアを閉め、様子を窺うが、他には誰も見当たらない。
「仮眠室で、悠理が寝てますの」
声をひそめ、彼女は心配そうに言った。


172 :横恋慕(75):04/08/13 22:41
野梨子によれば、先日のパーティーで、悠理はどうやら広間へ戻らなかったらしい。
魅録が彼女を見つけた時、すっかり冷え切った身体で、裏庭のベンチに座り込んでいたそうだ。
「あの、馬鹿」
思わず舌打ちをすると、野梨子は「ええ、本当に。せっかく、6人で記念写真を撮る予定でした
のに・・・」とため息をついた。
「かなり熱があるようで・・・とりあえず魅録が薬を買いに出たところですわ」
薬箱はもう持ち帰ってしまったし、保健医も不在だと知っての上だろう。
「私、剣菱のおば様達に知らせて来ますわ。魅録が戻るまでここにいて下さる?清四郎」
野梨子の声に、僕は快く頷いて見せた。

魅録はまだ戻らない。


入るべきでない、と頭では判っていた。
だが、一人取り残された僕は、吸い寄せられるようにその扉の前に立っていた。
ちょっと・・・様子を見るだけだ。
自分に言い訳をしながら、ノブに手をかけた。


薄陽の射し込む狭い部屋の奥で、その影はベッドに横たわっていた。


・・・いつだったか、こんなことがあった。



173 :横恋慕(76):04/08/13 22:41
寝る間も惜しんで経営ゲームに夢中になっていた僕は、剣菱にいる間も婚約者と顔を合わせる
ことは殆どなかった。忙しさにかまけて、結局指輪のことさえ失念していた。
ある日の午後、ネクタイがどうしても気に入らないので取り替えようと、会議の前に自分の部屋
に戻った。そこで、なぜかソファから、見覚えのある茶色い髪が飛び出しているのを見つけた。
僕が課したレディ教育から、彼女がすぐに抜け出そうとするらしいことは、五代から聞かされて
いたから、大方またサボっているのだろう、と見当がついた。
なるほど、ここには彼らも探しには来ないだろうし、こんな時間に部屋の主が戻ってくるなど、
夢にも思わなかったに違いない。どこで鍵を仕入れたのかは知らないが、こいつにしてはよく
考えたものだ。
が、ちょっとした悪戯心が首をもたげ、耳元で怒鳴りつけてやろうと足音をひそめて近付いた
僕は、その場で動けなくなった。

似合わないドレスを着て眠りこける悠理の足下には、ハイヒールが乱暴に脱ぎ捨てられていた。
ダンスのレッスン中に転んだのだろうか。はだけた裾からのぞく脛に、青い痣があるのが見えた。
言い様のない罪悪感を感じ、乱れた前髪に指を伸ばす。
遊び疲れた子供のようにあどけない表情を浮かべ、婚約者は安らかな寝息を立てていた。

柔らかな髪を梳き上げるうちに、不意に自覚した。
この人と一生を共に過ごすのだ、と。それを望んだのは・・・僕自身なのだ、と。

不思議な感慨と、名も知らぬ衝動が僕の内に沸き上がった。
その想いの持つ名を知らぬまま、気付いた時には唇を重ねていた。
・・・互いのぬくもりを確かめる程度の、幼い口づけだったけれど。

そっと離れると、結局ネクタイを取り替えることもなく部屋を後にした。
彼女のスケジュールを少し見直すべきだろうと考えながら。
だが、結局実行に移す機会はなかった。その二日後、僕達の縁談は白紙に戻ったからだ。

返す、と指輪を突き出す悠理に、捨ててくれと言い残し、僕は剣菱を去った。

174 :横恋慕(77):04/08/13 22:42
熱のせいか、いつもより火照った頬が目についた。

なぜ・・・戻らなかった?魅録の元へ。
胸の内で問いながら、汗ばんだ額へ手を伸ばそうとして躊躇い、戻す。
それは、名ばかりとはいえ、婚約者だった人。だがあの時とは状況が違う。今は親友の恋人だ。
邪な気持ちで触れることなど、許されようはずもない。

左手に光る小さな指輪は、その人を、他の男へと繋ぐ哀しい印。


とうに諦めたはずだった。
僕にはもう関係のない人だ、と。幾度もそう自分に言い聞かせてきたはずだった。
魅録に寄り添う姿を目にしても、もう胸は痛まないと思っていた。
この人の笑顔を、幸せを、それだけを望むことに決めたはずだった。


―あたいと・・・本気で結婚する気だったのか?―

探るような瞳に気取られないように、僕は上手に嘘をついたはずだった。
戻れない道だと、知っていたから。
あの甘酸っぱい感情が、衝動が、恋という名を持つと知ったのが・・・遅すぎた。


僕達を縛るのは、友情という名の枷。
僕達を繋ぐのは、友情という名の絆。



175 :横恋慕(78):04/08/13 22:43
触れては、ならない。もう一度頭の中でくり返す。
判っているはずなのに、体は勝手に近付こうとする。


息を殺し、そっと覗き込む。
夢でも見ているのだろうか。長い睫毛が小さく揺れている。
僅かに開かれた唇から、時折苦しそうな息が洩れる。

熱い吐息を感じ、瞳を閉じた。


ほんの一瞬だけ僕のものになる、柔らかな感触。
その懐かしさに、ひどく胸が痛んだ。



そうして。
あの時と同じように、僕はまた背を向けた。



[続く]


176 :名無し草:04/08/13 23:12
>横恋慕
きたきたきた〜〜〜〜!!
清四郎の切なさに胸が痛みます。
悠理の目が覚めていたら・・・さあどうなる?
早く二人にはお互いの気持ちに気づいて欲しいです。
その上でじっくり考えて結論を出してくれ。

自分的にはどちらともくっつかない悠理を妄想。

177 :名無し草:04/08/13 23:46
>横恋慕
2回とも悠理の目が覚めてたってことになったら、清四郎どうするんでしょう。
魅録は薄々ながらも悠理の気持ちに気づいていそうだし、肝心の二人が何とかしなければ!

178 :名無し草:04/08/14 12:49
>横恋慕
はっ。寝てる間に唇を・・・それも2回。
真@様か!?あんたは。清四郎さんよ。

179 :名無し草:04/08/14 23:24
真@様って?

と書いて気がついた。紫の薔薇の人ね。

180 :名無し草:04/08/15 09:27
>横恋慕
ねてるときにチュー盗むのが清四郎らしくて萌えです
ストーリーも気になるが毎回切ない系の萌えがもりこまれてて嬉しい

>紫の薔薇
寝ぼけ頭で読んだんで紫の衝撃の人かとおもたよ(パンツのヤツね)
あれも続きが気になるな。

181 :名無し草:04/08/15 12:39
>180
>(パンツのヤツね)
激藁! 続きは過去ログ確認すると<次回、『くいこんで痛いの』をお送りします>って
なってるけど、違ってても全然いいんで、書いて欲しいな…

182 :<暴走愛>:04/08/15 23:47
暴走愛うpします。
清×可、野×修平です。

183 :<暴走愛>第3章(26) :04/08/15 23:48
>>168
居間にはストラヴィンスキーの『春の祭典』が流れていた。
可憐がそっと部屋の中に入ると、ドアに背を向けて置いてあるソファに深々と身を沈めた人物が
闖入者に向かって話し出した。

「オヤジの古いレコードが、地下の音楽室に置き去りでかわいそうでしたのでね」

三年ぶりに聞く声だった。
変わらない、落ち着いた良く通る声。明瞭な発音。
三年も経ったのにどうして変わらないの。
変わっててよ。
少しでも変わっててくれたら、こんなに胸が揺さぶられずにすむのに。

乾いた唇を引き締めると、可憐は閉めたドアに背をもたせ、腕を胸の前で組んだ。

ソファの人物は相手の沈黙にも構わず喋り続けている。
入ってきた人物の想像がついているのだろうか。
大方、野梨子と思っているのに違いない。

「だいぶ片付けましたよ。オヤジの奴、お袋が出て行ってからすぐに手伝いの人を辞めさせたらしい。
 もうあっちこっちひどい有様でね。人間の住む場所じゃありませんでしたよ。
 もっともそのおかげで妙な感傷に浸る暇がなくて助かりましたがね。
 一日ゴミと洗濯物と格闘ですよ。まいった」

大きな伸びをすると立ち上がり、振向いた。

可憐は、男の瞳が見開かれるのをじっと見守った。
そしてその中に確かに困惑の色を見つけた。けして喜び、ではなく。

二人は何年かぶりで対峙した。
感動の余り抱き合うのでも、うれし涙で頬を濡らすでもなく
ただ互いの顔を凝視し、目の前の人物の出方を見守った。

184 :<暴走愛>第3章(27) :04/08/15 23:49
ホテルの部屋の扉がノックされている。
己の部屋がノックされていることに漸く気がついた修平はのっそり立ち上がり、ドアに近づく。
部屋に入ってきたのは野梨子だった。
修平は酔った頭を振り絞って、笑顔を取り繕うと慌てて彼女を招き入れた。
急いで酒を片付ける。
野梨子は困ったように微笑むと四角い風呂敷包みを差し出した。
「これ、母から言付かって参りましたの。お口に合うかわかりませんけど召し上がってください」
修平は頭をかきながら包みを受け取ると、自分の息子と同い年の娘に向かい深々と頭を下げた。
「いつもありがとう。もう気を遣わないでくださいってお母さんにお伝えください」

再び困ったような顔を見せる野梨子に、修平はベッドに腰掛けるように即すとコーヒーを入れ始めた。
その隙に野梨子はぐるっと室内を見回す。
ツインルームのベッドにはロマンティックなピンクの花柄のベッドカバーがかかっている。
もっさりとした修平に似つかわしい部屋とは言えなかった。
片方のベッドはきちんとベッドメイクされた時のままで、もう片方は真ん中に皺が寄っていた。
さっきまで寝転がっていたのだろう。
野梨子は皺くちゃになった修平のワイシャツの背中を見ながら、そう考える。

妻と子に見放され、この人は一体、毎日何を考えてこの部屋で過ごしているのだろう。
病院院長という仕事がら寝に帰るだけのものかもしれないが。
顔色が悪いが食事はきちんと摂っているのか。
修平の背中に視線をやりながらそんなことを考えていた野梨子は
目の前に湯気の出たコーヒーが差し出され、ハッとした。

「インスタントでおいしくないけど」
「いえ……いただきます。すみません、お休みのところお邪魔して」
「いや、いいんだよ。こうやって、仕事以外で人と向かい合ってコーヒー飲むなんて久しぶりだから嬉しいよ」

清四郎はまるで修平とは似てないと思っていたのに、修平の微笑んだ顔はどこか清四郎のそれに似ている。
不思議ですわね、と一人ごちながら野梨子はコーヒーを口にした。

続く

185 :名無し草:04/08/16 00:40
>暴走愛
前回、あまりに唐突に清四郎が父親に楯突いたので、少々面くらいましたが
これから謎が明らかにされていくのでしょうか。
しかし、修×野…かなりやばいムードですね。ホテルだし。
だいぶ前に、彼女に目を奪われていた修平のエピソードがありましたね。
伏線が生かされるのかと思うと、展開が楽しみなような、恐いような…。

186 :名無し草:04/08/16 13:38
清×野をうPします!!
少々野梨子がかわいそうだと思います・・・。
苦手なかたはスルーしてください。


187 :名無し草:04/08/16 14:14
>186
まだ?

188 :名無し草:04/08/16 14:14







                           まだ?



189 :名無し草:04/08/16 14:15
>186
野梨子かわいそう・・・

190 :188:04/08/16 14:15
187さんとケコーンしてしまったw
すんません清×野スキーなんで待ちきれなくて・・・。

191 :名無し草:04/08/16 14:16
>>186

泣きました。
野梨子が少々かわいそうだね。

192 :188:04/08/16 14:25
189タンと191タンは早売りゲッターさんですか?
私は田舎者なのでまだ発売されてないらしく、いまだ読めませぬw

冗談はさておき早く読みたいです、186さん、お願いします。

193 :すべてはあなたのために(1):04/08/16 14:51
『さくらぁ・・さくらぁ・・やよいのそらは・・みわたすかぎり・・・』

一面の桜がわっと舞った。
やっと暖かくなってきた4月。やわらかい風が自分を囲むように吹いている気がする。

・・・風が、僕の耳に甘い彼女の声を運んできた。
「私・・・清四郎のことが好きですの・・・。」
凛とした強い瞳で彼女は言った。
何にも汚されてない純粋な瞳・・・僕はこの瞳がたまらなく好きだ。
「・・・野梨子・・・。」

桜の花びらが、彼女にまとわりつくように舞い、彼女の美しさを一層引き立てていた。
僕は、まっすぐ野梨子を見つめる。
野梨子のこの気持ちは、前々から知っていた。
ーーーーーそれが本当の恋ではないということも・・・。
「野梨子・・きみは僕を愛してはいない・・。」
「あら、なんでそんなこと清四郎にわかるんですの?」
「・・・・僕にはわかるんですよ・・。」
そうだ。野梨子は僕を男として見ていない。明らかに他の男子と接し方がちがう。
美童や魅録が手を触れるとすぐに赤くなるくせに、『足をひねった』といい、
僕が手当するために足をふれても照れずに、普通の表情であった。
「とにかく・・僕はあなたを一人の女として見ることができないのです。
 大切な幼なじみ、友達とでしか・・・」
この言葉にうそはなかった。

ーーーーぶわぁっーーーーー
風がさっきより強く吹いている。
「・・・つまり・・清四郎は、私を愛してはいないのですね?」
ーーまたあのときの表情・・不安の色も悲しみの色も、野梨子の顔にはない。
ただ、普通の、人形のような顔。

「そうです野梨子。僕はあなたを愛せません。」

194 :すべてはあなたのために(2):04/08/16 15:24
僕は、はっきりと野梨子の目を見て言った。
そのほうが野梨子のために・・・そして自分のためになると思ったから。
野梨子はにっこり笑っていた。
「わかりましたわ清四郎。あなたの本心が聞けてよかったですわ。じゃぁ、また明日学校で。」
たたっと帰っていく。野梨子は傷ついてはいない様子だった。
『これでいいんですよね・・これで・・』

ーーーーーーさくらが泣いてるような気がしたーーーーーーー

「・・・で、野梨子どうだったの?」
「見事にふられましたわよ。『一人の女として見れない』って言われましたわ。」
「絶対くっつくと思ったのに・・あの保護者め、まーだ野梨子を自分の妹として思っての?
 野梨子だってもう18歳よ!恋人の4〜5人はいてもいい年頃よ!!」
可憐は一生懸命力説しているが、悠里は心配しているのか野梨子の様子をじ〜っと
ながめている。
「・・・・・野梨子・・・ショック受けてないのか・・・・?」
「大丈夫ですわよ悠里、心配しないでくださいな。ただ恋愛の対象にはなれないだけで、
 友達終わりというわけではありませんから。私はこれからも清四郎とおしゃべり
 できればそれでいいですわ。」
野梨子がにっこりと笑い、それが辛そうに可憐と悠里には見えた。
「まっ、あたいがいつでも相談にのってやるよ!!」
「あら―悠里にするんだったらあたしにしたほうが、何倍もためになるわぁ。」
「ありがとう・・・・可憐・・・・悠里・・・。」
ほんとうにこの2人と友達になれてよかったと、野梨子は思った。
野梨子の気持ちが、ほんのりと暖かくなった。


195 :すべてはあなたのために(3):04/08/16 16:05
清四郎は自分のベッドに横になっていた。
あの日からどうも眠れない・・・・桜に囲まれている野梨子・・・あの瞳がどうしても
忘れられず、この言葉が耳に残る。『清四郎は私を愛してはいないのですね・・・・』
「このままじゃだめだ・・・。」
頭がいっぱいで、どうにかなりそうだった。
野梨子が男に惚れることが出来ないのは、お前が傍にいるからだと、よくいわれる。
――――そうだ・・・・自分が傍にいるから野梨子が自由になれない。
野梨子から離れれば・・・・。清四郎はある決心をした。


〜♪〜♪〜♪〜野梨子の携帯の着メロが鳴った。
「う〜ん・・・だれですの・・こんな時間に・・・!!・・清四郎。」
野梨子の携帯の画面には『菊正宗清四郎』の文字。
期待と不安の入り混じった気持ちで電話にでる。
「・・・・・なんですの清四郎?こんな夜中に。」
「・・・・・野梨子・・・・・。」
なんだか清四郎の声がとても懐かしく聞こえてしまうのはナゼだろう。
顔が少し、熱くなった。
『やっぱり・・・私、まだ清四郎が好きなんですわ・・・』


196 :すべてはあなたのために(4):04/08/16 16:39
「明日から・・・一緒に学校に行くのやめましょう。」
一瞬、清四郎が何語を話しているのか分からなかった。
「なっ・・・ナゼですの!!私・・なにか・・。」
「あと、学校では必要最低限のことしか話さないでください。いいですね?」
「まって!!・・・せいし・・・。」

――――――つーつーつーつー――――

無理やり電話がきられた。『清四郎の気が変わったのかもしれない』と、期待を
抱いたのもつかの間。いきなり現実に戻されたような気がする。
「こんなことなら・・・告白なんてするんじゃありませんでしたわ・・・。」

畳には、丸いシミができていた・・・・・・・。

――――翌日――――
『ねぇ、みましたか?菊正宗様と白鹿様!!』
『ええ!!いつもは一緒に登校してきますのに。しかも、廊下ですれ違ってもあいさつも
 お話もされませんのよ。喧嘩でもしたのでしょうかね?』
『どっちにしろ、私たちにはチャンスですわ!』
2人のことは、すでに校内中にひろまっている。
『白鹿さん!!菊正宗くんとは付き合ってないんですね?』
『白鹿さぁ〜ん!一緒にお話してくださぁ〜い!!』
野梨子の教室の前には、たくさんの男子。
しかし野梨子はそっぽむいている。

そして放課後―――――――
生徒会室には、有閑倶楽部のメンバーがそろっていた。


197 :すべてはあなたのために(5):04/08/16 17:18
みんなすごい形相で清四郎をにらんでいる。もちろんそこに野梨子はいない。
「ど―ゆ―ことだよ清四郎!!」
「なにがですか?」
怒りが限界に達し、悠里は清四郎につかみかかっている。しかし、清四郎は、表情ひとつ崩さない。
「野梨子が辛いときにさらに追い討ちかけるようなことしやがって・・・。
 なんで野梨子を避けるんだよ!!ふられても、『清四郎と話せるだけでいい』っつて
 たんだぞ!・・・・・それを、お前は・・・・」
魅録と美童は野梨子が告白したことを知らなかったが、今はそれどころではない。
「こうしたほうが、彼女のためになるんです。」
「ざけんじゃね―よ!!ためになるとかならないじゃなくて、野梨子は悲しんでんだ!!」
「そうですか?いたって普通でしたよ。」
「この・・・・・・・」

―――――パーーーーン!!―――

気持ちのいい音が室内中に響き渡る。可憐が清四郎を平手打ちした。
「ひえっっっ・・・・・」悠里は腰を抜かしている。
「野梨子の表情の変化もわからないような奴には何をいっても無駄よ。いくわよ悠里!!」
「清四郎・・・・・・」
可憐がまじめな顔をしていった。
「後で後悔しても遅いんだからね・・・・・・。」

198 :すべてはあなたのために:04/08/16 17:34
つぎはR−15?というか微妙にエロいシーンがあります。
苦手な方はスルーしてください。

199 :すべてはあなたのために(6):04/08/16 17:55
―――夜・・・・野梨子は桜でも見に行こうと思って、外に出た。
まだ春だというのに、暑いくらいの夜だった。
『清四郎と一日話さなかっただけで、こんなに辛いなんて・・・』
暗い暗い夜道を一人寂しく歩く。これからもこんな毎日が続くと思うと、涙が出てくる。
『明日も今日のような日になるのでしょうね・・・・』

―――きずくとかなり歩いていたらしく、清四郎に告白したときの場所についた。
『あぁ・・・ここで告白なんかしなければ・・・・』
風がサラサラ吹き、野梨子の髪をなびかせる。
「――ねぇ、キミ。こんなところでなにしてんのぉ?」
野梨子は、ビクッとした。そこにはニヤニヤしている三人の男が蛍光灯の下で妖しく光っている。
「もしかして家出?だったら俺たちがイイとこ連れてってあげるよ。」
一人の男に手首をつかまれる。
「いっ・・・いやっ・・・!離してくださいな!!」
「あばれんじゃね――よ!!」
残りの2人の男によって服を切られた。

200 :名無し草:04/08/16 19:34
おわり?
続くんなら続くって書けやゴルァ!w

しかしいつかの夏の迷宮を思い出すなあw
ご本人じゃないよね?

201 :名無し草:04/08/16 19:46
ホントに迷宮を思い出す文才の無さだな。
マジで箱チャンですか?
せめてしっかり書き上げてからupしろっての。
時間があきすぎ!

202 :名無し草:04/08/16 20:00
200、201エラいね、ちゃんと読んでんだー。
あたしゃ1レスでギブアップだよ。

203 :名無し草:04/08/16 20:05
正直な感想なんだけど。
メンバーの言動も199の展開も、幼稚というか安易というか・・・orz
高校生に見えない有閑倶楽部の大人っぽさを殺さないでくれ。

204 :名無し草:04/08/16 21:38
>>186

悪いけど、作品の出来以前の問題な気がする。
まず、お約束をきちんと読もう。すべてはそれから。
他の作家さんがどのようにしてるか見るのも一つの方法だと思うよ。
それを理解するまで、作品アップは控えて欲しい。
あなたのような厨にスレ荒らされたくないし。

205 :名無し草:04/08/16 22:28
あら、まだやってたのねこの人
あたしゃNGワードでアボーンだよw

206 :名無し草:04/08/16 23:31
>205
姐さん教えてください。誰と一緒なのよ〜?!

207 :名無し草:04/08/17 00:02
>>199
きずく→きづく(気付く)
だよ。
このあたりのミスでも書き手の国語力がわかる。

208 :名無し草:04/08/17 00:40
『鬼闇』うPします。
>>147の続きです。
オカルト&一部グロテスクな表現がありますので、苦手な方はスルーして下さい。

209 :鬼闇(40):04/08/17 00:41
「千年の鬼を起こしてしもうたな…。」
清四郎の話を聞き、菊江は大きく息を吐いた。
「鬼…ですか。」
「…本当にいたんだな。」
清四郎、魅録の二人は菊江の言葉が信じられなかったが、人の仕業でないこの猟奇的な事態が、
鬼の仕業であるならば理解できると思った。
「鬼って豆まきとかの?」
「今の時代に鬼って言われても…」
「信じられないよぉ。」
悠理、可憐、美童に至っては、ほとんど信じていない。
それでも二人が血にまみれて帰ってきたことを考えれば、信じるしかないとも思う。
「…でも、現実ですのね。」
野梨子がポツリと呟いた。
清四郎と魅録は嘘をついていない。

「わしが聞いた話によると、この町は佐々の先祖が造ったと言われておる。」
再び菊江が口を開いた。
「確か、京から流されたと聞いていますが。」
清四郎の言葉に菊江が頷いた。
「そのとおりじゃ。どうして流されたのかもわからんし、先祖が何をしたかも解らん。ただ、昔から
佐々の者によって伝わっていったのが、北東の祠の鏡だけは封を解くなかれ、ということじゃ。」
菊江が皆の顔を見渡した。
「『千年の時を経て鬼が現れし時、四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に
宿り、再びこの世に光溢れん』 あの祠にあった鏡は、その二つの鏡のうちの一つじゃ。」
皆も菊江の重い口調に、ゴクリと息を飲み込んだ。
「確か義正さんが、今年は千年目に当たると言っていましたね。」
「ああ、そうじゃ。もしかしたら、先祖の義忠は鬼の復活を予言していたのかも知れんな。だとした
ら、それさえ無視してしまった人間の、なんと愚かなことよ。」
清四郎の問いに答えながらも、菊江の目には光るものが浮かんでいた。

210 :鬼闇(41):04/08/17 00:42
「…あの地震が全ての始まりでしたのね。」
野梨子が大きく息を吐いた。
「そして、あの二人が封印を開いちまったわけだ。」
魅録はあの二人を思い出していた。
愚かにも封印を解いてしまった二人を呪いたくもなるのだが、既に二人は大きな代償を支払って
いる。
自分達の命だ。

「豆でやっつけられないかなぁ。」
「じゃなかったら、カラーボールが命中すると、ンガガガガーッって鳴くとかさぁ。」
美童と悠理が重い雰囲気に耐えられなくなったのか、軽口をたたいたものの、周りからは冷たい
視線だけがビシビシと突き刺さった。
「…ったく、二人共こんな時に、よくそんな冗談が言えるわね。ばか!」
可憐を始め、皆の視線が痛い。
「すいましぇーん。」
二人は身を小さくしながら、素直に謝った。

「清四郎、どうしましたの?」
野梨子は何やらブツブツと呟いている清四郎に声をかけた。
「あの言い伝えのことを考えていたんですよ。『千年の時を経て鬼が現れし時』、これは正に今の
事態を指しています。そして、『四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ』ということは、何かしら鬼を
封じる手立てがあるということです。」
何か、何かある筈だ。
鬼を倒す手段が。
それに先祖の佐々義忠は、どの様にして鬼を退治したのだろうか?
清四郎は菊江や義正から聞いた言い伝えについて、真剣に考えていた。
「それが四つの御霊と二つの鏡ってことか。」
清四郎の言葉を受けて、魅録も頭を巡らせた。
「鏡は例の祠の鏡ですわね?二つというは他にもありますの?」
野梨子の問いに答えたのは、菊江の部屋に入って来た義正だった。

211 :鬼闇(42):04/08/17 00:43
「ええ、南東の祠は無事です。君達が母と一緒に北東の祠へ行っている間に、念のため私が確か
めて来ました。」
義正の口調はとても重いものだった。
鬼が出現し、人々が襲われているのである。
外に出ることもままならないこの状況を考えると、鬼来里には未来さえないのかと思ってしまう。
いや、鬼来里だけではない。
このまま鬼が人々を襲い続ければ、いずれは新たな場所へと移動するであろう。
そうなれば、日本は、人類は…。
考えたくもない未来を思い、沈む義正の気持ちが表情と口調に表れていた。

「『千年の時を経て鬼が現れし時、四つの御霊と二つの鏡にて鬼を封じよ。さすれば御霊刀身に
宿り、再びこの世に光溢れん』 昔から伝わって来たとはいえ、まさか本当に起きるとは…。みな
さん、せっかく来て下さったのにこんな事になってしまって、何とお詫びをすれば良いやら…」
皆に向かって頭を下げようとする義正を、可憐の言葉が遮った。
「おじさまが謝ることじゃないわ!」
「そうですよ、誰もこんな事を予想出来るわけありません。」
「有難う。みなさんにそう言って頂けると嬉しいですよ。」
清四郎の言葉にも、義正は力なく微笑むだけだった。

「義正、お前がそんな顔をしていたら皆が不安に思う。しゃんとしろ。」
不意に発せられた菊江の叱責に、義正がはっと顔を上げた。
「…そうでしたな、嘆いてばかりの自分が恥ずかしい。我町のことなのに、みなさんが真剣に考え
て下さっている。有難いね、母さん。」
「おっちゃんみたいな偉い先生でも怒られるんだ。」
悠理が面白そうにケラケラ笑った。
「こら、悠理!」
清四郎が諌めようとするのを、義正が笑いながらとめた。
「いや、悠理君の言うとおりさ。私も母にかかっては、いつまでも鼻たれ小僧なんだよ。」
「ああ、そのとおりじゃ。」
緊張が続く中、一瞬垣間見せた皆の笑顔だった。

212 :鬼闇(43):04/08/17 00:44
「では、続きに取り掛かるとしましょう。この『さすれば御霊刀身に宿り』という下りですが、四つ
の御霊の力が刀身に宿ると考えて良いと思いますので、刀身、つまり刀が必要になるわけです。
ただ、それも並の刀ではないでしょう。例えば三種の神器の一つである『草薙の剣』のようにね。」
「じゃ、『再びこの世に光溢れん』は、鏡と御霊と力が宿った刀で鬼を退治すれば、再び平和な
世界が訪れる、ということじゃない?」
「おおー、美童、あったまいー!」
悠理に誉められて美童も嬉しそうに、フフンと笑った。
「簡単に言ってくれますよ。御霊と刀のありかも解らないというのに。」
そんな二人に呆れつつ、清四郎が溜息混じりに言った。

「ねぇ、清四郎。昨日地図を見て、神社が東西南北と中央にあるって言ってましたわね?」
不意に野梨子が口を開いた。
「東西南北に四つ、中央に一つ。何か意味があるのではないかしら?」
出現した鬼に気を取られ、すっかり忘れていた。
初めて地図を見たときに感じた、嫌な感じ。
今までも、そういった「引っかかり」が事件解決には必要だったことを、清四郎は思い出していた。
自分の第六感を信じてみることにした。
「神社の名前は何というのですか?」

「北は玄武神社、東は青龍神社、南の朱雀神社、西が白虎神社、そうして中央の大きな神社が
刀守神社です。」
義正の答えに魅録が割って入った。
「ちょっと待ってくれ。刀守ってことは、刀がそこにあるんじゃないか?」
おお、と義正も目を輝かせながら頷いた。
「その通りですよ。刀守神社には刀を、他の四つの神社はそれぞれ宝玉を御神体として祭って
あります。」
「じゃ、御霊ってば、その宝玉のことなんじゃない?」
「どうやらそのようですね。」
清四郎が可憐に向かって大きく頷いた。

213 :鬼闇(44):04/08/17 00:45
「やったーっ!!」
悠理、美童、可憐は飛び上がらんばかりに、キャッキャと喜んでいた。
それに対して、野梨子と魅録の顔は険しいままだ。
「かといって、それをどうするかは解りませんものね。」
「そうなんだよなぁ。」

「あとは何か聞いたり伝わったりしたものは?」
二人同様、難しい表情のまま清四郎が義正に尋ねた。
「残念ながら、ありません。」
義正の答えに、菊江が口を挟んだ。
「あとは、昔の書物が残っているかどうかじゃな。」
「蔵ですね?」
「ええ、大抵のものは蔵にしまってあります。」
清四郎は義正に向かって頷くと、皆に向かって言った。
「みんな、行きますよ。」

皆が立ち上がろうとしたところを、魅録が制した。
「待てよ、いくらすぐ隣だからといっても、外へ出るのは危険だ。」
「問題は蔵へ行くまでの間ですね。例えわずかとはいっても、いつ襲われるかもわかりません。
さっきの僕達は幸運としか言い様がありませんでした。」
清四郎が両腕を組みなおす。
鬼に襲われずに外へ出る方法。
幸運に頼るしか方法がないのだろうか?
「うーん。」
再び皆が頭を悩ませていた。

そんな思考を義正の言葉が遮った。
「そういえば…。」
義正が何やら思いついた様子で立ち上がり、台所へと向かって行った。
皆も何事かと、義正の後を付いて行く。

214 :鬼闇(45):04/08/17 00:47
「確か、ここだったはず。」
そう言って、納戸の引き戸を開け、中へ潜り込んだ。
「ああ、ここだ、ここ。」
暗闇から義正の声だけが聞こえてきた。

「何があるんですか?」
魅録が問い掛けてみた。
「戦時中に作られた隠し通路さ。」
切羽詰った状況の中にもかかわらず、義正の声は少し弾んでいた。
義正の人を驚かせることに喜びを感じる性格が、再び表れたに違いない。
「へぇー、どこに繋がっているの?」
美童の問いに義正は頭をひょいと出し、質問で返した。
「どこだと思う?」
にこにこと笑顔が浮かぶ義正に、可憐も声を上げた。
「まさか、蔵の中とか?」
「当たり。」
以外でもあり、又、至極当然でもある答えに、今度こそ皆は喜びの声を上げた。
「やったー!」

「くっ…。だめだ、わたしの力では開かないよ。」
五十年以上も昔に作られ、以降全く使われることの無かった扉である。
直ぐに開く方が驚きだろう。
「代わります。」
清四郎はそう言って義正と代わり、呼吸を整えた。
「ふむっ!」
清四郎の気合と共にガタンと扉が開いた。
「いやー、さすが武道の達人だねぇ。」
義正が拍手と共に、驚きと賞賛の混じった声で称えた。

215 :鬼闇(46):04/08/17 00:47
「あたい、こういうの大好き!一番乗りだじょー!」
直ぐ後ろにいた悠理が清四郎の脇をすり抜け、一歩足を踏み入れた。
「うわっぷ!うげーっ!」
悠理の悲鳴に、魅録が声を掛けた。
「どうした?」
「く、蜘蛛の巣が…。」
戻ってきた悠理の頭と顔面には、蜘蛛の巣がベッタリと張り付いていた。
「なにしろ、60年ぶりだからねぇ。」

「おっちゃん、箒かなんか貸してよ。蜘蛛の巣を払いながら行くからさ。」
悠理が頭や顔に付いた蜘蛛の巣を、手で払いながら言った。
「箒ならこの納戸の中にあるよ。お、あった、あった。」
義正が納戸の隅に掛けてあった箒を悠理に渡した。
「ありがと、おっちゃん。」
悠理が箒を片手に笑顔を見せ、礼を言った。
どうやら先頭を誰にも譲るつもりはないらしい。
「じゃ、そうと決まれば、行くぜ。」
魅録は自分の後ろにいた三人に声をかけた。
その三人はというと…。
「あたし、こういうところはちょっと…。」
「僕も遠慮したい。」
「…私も、茶の間でおとなしくしていますわ。」
可憐、美童、野梨子の三人は一歩後ろへと引いた。

「何言ってんだよ!可憐や美童はともかく、調べ物に関して野梨子は戦力になるんだから来なきゃ
ダメだろ!」
普段から、ここ一番の強さを見せる野梨子である。
その野梨子が後ろへ引いたのを見て、悠理は声を上げた。

216 :鬼闇(47):04/08/17 00:51
「だって、蜘蛛は苦手なんですもの。他にもムカデとかいそうですし…。」
野梨子は後ろめたさがあるのか、今までよりも声がトーンダウンしている。
しかし、悠理は容赦がなかった。
「蛇の時は逃げなかったじゃないか!」
「誰だって苦手なものはありますでしょ!私、蜘蛛やムカデみたいに足が沢山あるのってダメなん
です!」
どうやら生理的に受け付けないらしく、野梨子が身震いしながら叫んだ。
「悠理だって長くてにょろにょろしたものはダメって言ってたじゃありませんの。」
「あれは、お前のおかげで克服したじょ!」
アドベンチャークイズでの出来事を思い出したらしく、悠理はジロリと野梨子を睨んだ。
「そ、そうでしたわね…。」
明らかに形勢が不利だと悟った野梨子は、大きな溜息を吐いた。

野梨子がきつい皮肉で悠理をやり込めるのは常日頃のパターンであり、逆というのは滅多にない。皆も高みの見物をしていたいのは山々なのだが、急がなければならない今は別だ。
「別に野梨子に先行けって言っているわけじゃないからさ。可憐も美童も俺達が先に行くから、
その後をついて来いよ。」
普段ならやさしい魅録も、どうやら許してくれそうにない。
「そうです。事は急ぎますので、人手が多いに越したことはありません。野梨子、このまま悠理に
言わせておいて平気なんですか?」
さすが幼馴染、プライドが高く、負けず嫌いの野梨子の痛いところを突いてきた。
「…解りました。仕方ありませんわね、美童、可憐?」
「気持ち悪いとか、そんなこと言ってられないってことだろ?」
「そうね。ここで踏ん張らなきゃ、女がすたるってもんだわ!」
美童と可憐は、自分に言聞かせるように声を張り上げた。

                  【つづく】


217 :名無し草:04/08/17 09:52
鬼が襲ってくるという一大事の前に、
蜘蛛やムカデが嫌いだから行きたくないと揉める様子が
らしくって面白いです。
これから鬼へ戦いを挑むのでしょうが
一波乱ありそうですね、期待してます。

218 :名無し草:04/08/17 18:51
>鬼闇
このお話は6人がまんべんなく登場するのが嬉しいです。
可憐が鬼になった時は、悠理はビビりまくってましたが、
今回はずいぶんと積極的ですね。
鬼退治は清四郎と魅録が中心でしょうが、
彼女が壁に押し込んだ巻物が鍵を握りそうですし、
野梨子ともども、今後の活躍が楽しみです。暴れて欲しい!


219 :名無し草:04/08/18 22:09
突然ごめんだけど、
女子バレーのキューバの監督がコルバ将軍に禿似だったw

220 :名無し草:04/08/19 00:05
む。コルバ将軍、見そびれた…
オリンピック盛り上がってますよね。
しかし、清四郎って柔道も強いんだろうか。
なんとなく少林寺拳法とか空手のイメージだけど…
剣道も似合いそうですな。
真剣白刃取りできるくらいだし。



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